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1.シドニーを出発
4月11日(日)、晴れ。現金30ドルと、マウンテンバイクと、手作りの「30ドルチャレンジ」ゼッケンを首にかけて、午前8時、シドニー・セントラル駅を出発。目指すは西の方角・内陸部。ここは広大なオーストラリア大陸だから、大陸縦断を目指して少しでも前に進みたい!
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30ドルという限られた予算の中で少しでも距離を稼ぐためには、できるだけ安い交通機関を使うのがベスト。シドニーを起点に、内陸部(キャンベラ方面)に向かう公共交通機関は鉄道と長距離バスがあります。そのうち鉄道に関しては、シドニー都市近郊鉄道CityRailと、ニューサウスウェールズ州の広大な農村地帯を結ぶ長距離鉄道CountryLinkの二つの経営主体があり、どちらも料金体系から運行車両から車内規則に至るまで全然違います。例えば、CityRailでは自転車持込OK(しかも無料)なのにCountryLinkでは原則禁止、CityRailは原則全て自由席なのにCountryLinkは指定席制etc・・・これは日本でいえば、「JR首都圏」と「JRその他日本」の二つの鉄道会社があって、全く違うルールで運行されているようなものです。
一方長距離バスは、Murrays、Greyhound&McCaffertysなどの大手バス会社と、Sid
Foggs、Transborder
Expressなどの中小会社が競合しつつ、シドニー、キャンベラ、メルボルンなどの大都市間を結んでいます。ですが、シドニーからキャンベラまで通しでバスに乗ると片道$35かかってしまうし、日本の路線バスみたいに途中の停留所で降りることもできないので、予算30ドルしかない私は、長距離バスをあきらめたのはいうまでもありません。
したがって残る選択肢は、CityRailとCountryLinkのみ。そこで料金体系を調べてみると、シドニー近辺に関する限りCityRailの方がずっと安い。じゃ、CityRailの安い料金でどこまで行けるのかというと、シドニーから約200km先のゴールバン(Goulburn)までで、それ以遠はCountryLink以外の選択肢がなくなります。そこで、とにかくゴールバンまでCityrailでいくのが一番トク、ということになります。
次に、出発点・シドニーセントラル駅からゴールバンまでの片道料金を調べてみると、25ドル。営業キロは216.8km。安いといっても結構高い・・・ですが、CityRailの料金体系をよくみると、215km以上は25ドルだけどそれ以内は21ドルで済む!・・・ということは、1.8km以上節約できれば、4ドル浮いて21ドルでゴールバンまで行けるわけです。より詳しく調べてみると、セントラル駅から2駅先のErskinevilleまで行って、そこでゴールバンまでの切符を買えば21ドルで済むことが判明しました。ところがこのErskinevilleという駅は小さくて、各停しか止まらない上に本数がやたら少ない。でもその二駅先のSydenhamまで行けば快速も停まり本数がずっと多い、ということで、思い切ってSydenhamまで自転車で移動することにしました。
セントラル駅からSydenhamまでの区間は、工場街や倉庫が並び、ちょっと殺風景なところです。数ヶ月前アボリジニ住民の暴動があったRedfernとか、「ゴミ埋立地の上につくったということが露骨に分かる公園」Sydney
Parkなど、ヘンなスポットをいくつか通過しつつ、30分もかからずにSydenham駅に到着。駅員に「ゴールバンまで行く」旨を伝えると、あまりの長距離にびっくりされましたが、21ドルの切符を渡してくれました。これで私の所持金は9ドル(30-21=9)に。でも距離を稼げるから嬉しい。
8:34、Sydenham駅を出発した電車は、シドニー南西郊外の新興住宅都市・キャンベルタウン(Campbelltown)に向かいます。ゴールバン方面に電車で向かう人は、ここキャンベルタウンで乗り換えなければなりません。というのは、シドニーからキャンベルタウンまでの約50kmは電化されていますが、それ以遠は非電化区間でディーゼル車しか走れないのです。あの昔懐かしい、煙モクモクあげながら進むディーゼル車・・・オーストラリアって、のどかな国ですね。
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9:19、キャンベルタウン着。この駅で9:49発のゴールバン行き(もちろんディーゼル車)を待ち、乗り込む。2両連結の、可愛らしいのが滑り込んできました。
たった2両連結といっても、ここはスポーツ王国・オーストラリア。サイクリストも多く、そのためこの通り、自転車置き場が設置されているのです。CityRailのイキな計らいにちょっと感動!
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ところが、感動したのも束の間。この電車、発車予定時刻を過ぎても一向に出発する気配がない。結局、キャンベルタウンを出発したのは10:20、つまり、30分も遅れやがったってことです。やっぱりここはオーストラリア。
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ところがこのディーゼル車、出発してみると速い、びっくりするほど速い・・・それもそのはず、キャンベルタウンを少し離れるとこの通り、なーんにもない。こんな風景が、ゴールバンまでずっと続きます。だから、周辺住民に気兼ねすることなく、好きなだけ飛ばせるのです。結局、ゴールバンに着いたのは12:27。予定時刻より15分遅れただけでした。
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2.駅間距離39km!恐怖のサイクリング
ゴールバンに着いた時点で、私の所持金は9ドル。ここから、キャンベラまでのCountrylink片道料金を調べると、14.3ドルで予算オーバー。ところが、次の駅タラゴ(Tarago)まで行けば、7.7ドルでキャンベラまで着けることが判明しました。こりゃラッキー♪ところが問題は、ゴールバンからタラゴまで、なんと39kmも離れているのです!駅間距離39km・・・広すぎるぞオーストラリア。
タラゴ発、キャンベラ行きの電車の発車時刻は15:13。今の時刻は12:31。ということは、39kmの距離を2時間42分以内で走破できればOK、ということになる。ということは、平均時速15km以上が要求されてくる。私が持ってきたのは重くてスピードの出ないマウンテンバイクだけど、平均時速15kmなら何とかなるだろとう思い、タラゴを目指して自転車を漕ぎ始めました。
ところが、そう簡単には問屋が卸しません。シドニーにいた時は爽やかに晴れ渡っていた天気が、ここ内陸部のゴールバンまで来るとどんより灰色の雲が天空を覆い尽くし、今にも雨になりそうな気配。果たして、その予感は当たりました。私が自転車で走り始めた約10分後には、結構強い雨が降り出してきたのです。急遽、雨合羽に着替えて、とにかく前に進む。
悪いことは重なるものです。タラゴまでの道は南を目指すかたちになるのですが、その南方向からかなり強い向かい風が吹いてきたのです。雨天の上、向かい風。これでは、常に坂道を上っているようなもんです。さらに、この地方は結構起伏が多く、日本の峠道とまではいかないけどダラダラと3km上がっては、ダラダラ3km下る、みたいな道が延々と続き、結構体力を消耗します。このサイクリングは、予想以上の難行苦行になりそうで、先が思いやられます。
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でも一番辛かったのは、どこまで行っても風景が変わらないことです。サイクリストにとって、これはしんどい。目印も、道標も、何にもない。対向車さえほとんどない。空と大地が延々と続くのみ・・・真面目な話、発狂しそうになりましたよ。
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「もうこんなアホなこと、二度とやるか!」と、悪態をつきながらもとにかく前に進む。時間に追われているから、休むに休めないし、それにこんな何もないところで休んでも空しくなるだけ。疲労困憊は極限に近くなる。タラゴの少し手前に、レイク・バサースト(Lake
Bathurst)という、素晴らしく美しい小村落があるのですが、そこで写真を撮る気力など全く残ってない。時計をみると、14:43、「タラゴまであと6キロ」の道標が・・・あと30分以内で6kmを走破しなくちゃならない。そこで、最後の力を振りしぼって、前に進む。うねる丘陵の先に、見えた!タラゴの集落が・・・住宅街をぬって、駅に到着。時計を見ると、15:06・・・7分の差で間に合った!
3.乗務員と大喧嘩
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荒涼とした風景の中に静かにたたずむタラゴの駅は、もちろん無人駅。一日にキャンベラ行きが2本と、シドニー行きが2本しか停車しない超ローカル駅らしい風景。ホームには私以外誰もおらず、ただ連絡用にインターフォンがひとつ置かれているだけ。
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結局、予定より10分以上遅れて、ホームに電車が滑りこんできました。どうせ遅れるのなら、あんなに無理して自転車飛ばさなくても良かったかな、と思いつつ、マウンテンバイクと共に電車に乗り込む。するとその時です、CountryLinkの男性乗務員が乗り込んできて、私にこう言いました。おいコラ、自転車は乗せてはいかんぞ。下ろせ。今すぐ下ろせ!。最初から、かなり高圧的な口調でした。
先ほど言いましたが、CityRailは自転車持込OKですが、ここタラゴの地はすでにCityRailの管轄外で、CountryLinkの電車しか通っていません。そのCountryLinkは、自転車持込禁止なのです。
私は、もとからそれが分かっていました。だから事前に、CountryLinkの本部に電話して、「どういう条件なら自転車持込がOKになるのか?」を聞いてきたのです。そこで本部が答えたことは、「前輪とペダルを外して、ダンボールなどで目印をつければ、搬送料金11ドルかかるけど、持ち込みOK」とのことでした。もちろん、もし搬送料金11ドル取られれば、「30ドル以内で到達」という目標が崩れてしまうわけですけど、「ま、オーストラリアの田舎の方なら、乗客なんかほとんどいないだろう。もしほとんど無人ならば乗務員も融通利かせてくれて、タダで乗せられるだろう」と思って、自転車を持ってきたわけなのですが、私の目の前に立っているのは、融通などこれっぽっちも利きそうにない、頭の固い小役人風の職員でした。
職員:自転車は、事前にダンボールで梱包しないと、電車には乗せられないんだぞ。下ろせ下ろせ!
私:そんな話は聞いていない。私は、事前に本部に問い合わせたら、前輪とペダル外して目印をつければ持ち込みOKだと聞いた。今から前輪とペダル外すから、乗せてくれ。キャンベラまで行く。
職員:ダメだダメだ。ダンボールに包まないといけない。これは規則だぞ。分かってるのか?
私は、こいつには負けてたまるか!と思いました。もちろん、CountryLinkの電車に乗る以上、規則には従わなくてはならないのは分かっています。でも、客に規則を説明するのに、そんな高圧的な言葉遣いをする必要はないでしょうが。「理」を説くには、静かに、とくとくと語ればよいのであって、そうすれば相手も納得してくれる。逆にそんな高圧的な態度に出られると、こちらもどんどん態度が頑なになって、水掛け論がますますひどくなる。私は、ムキになって反論を続けました。
あと、背に腹は代えられない、という事情もありました。今はとにかくキャンベラまでたどり着きたい。キャンベラなら、シドニーまで帰るバスもあるし、電車もある。ところがこんなタラゴみたいな寒村に下ろされたら、貧寒とした風景の中、何時間も、シドニー行きの電車を待たねばならない。しかも、シドニーに戻る電車内に自転車を持ち込めるという保障もない。最悪の場合、悪天候の中をサイクリングでゴールバンまで舞い戻ってCityRailの電車に乗らねばならないかもしれない・・・だから、私も必死でした。
運良く、もう一人の乗務員が口論を続ける我々のところにやって来ました。彼は話し方もソフトで優しく、「これは規則ですから乗せられないんですよ」と、説明してくれました。私はダメもとでもう少し粘ってみました。すると、二人の乗務員がヒソヒソと話した挙句、運転席近くの荷物置き場に自転車をそのまま乗せる、ということになりました。これで一件落着。
その荷物置き場には、態度悪い方の乗務員がいて、相変わらず高圧的な口調で、早くしろ!ふざけるな!などと私に怒鳴り続ける(あまりにムカついたので、ここで本名を明かしてしまえ!彼の名前はPeterです)。私は、「お前アホか?」と思いつつ、黙って自転車を空きスペースに置く。間もなく、電車が発車しました。勝った!と思いました。
その後、優しい方の乗務員に連れられて、食堂車まで移動して、キャンベラまでの電車賃を払う。私の運賃7.7ドルと、自転車の搬送料金11ドルで、計18.7ドル。この時点で、39.7ドル使ったことになり、予算オーバー。残念無念・・・でも、悔いはありません。逆に、勝ち誇った気持ちもありました。
キャンベラに向かう車窓では、面白いものを見ました。カンガルーの乱舞です。タラゴの次、Bungendore駅の近くの森林地帯では、カンガルーが何十匹もいて、ピョンピョンと活発に飛び跳ねていました。こんな近くで、こんなにたくさんのカンガルーを見たのは初めてのことです。
4.キャンベラでゴール!
16:35、電車は15分遅れでキャンベラ鉄道駅に到着しました。オーストラリアの首都・キャンベラ。ここまでに来たら、目指すのは国会議事堂(Parliament
House)しかないと思い、私は心の中で、ゴール地点を国会議事堂と決めました。キャンベラに着く頃には、あんなに悪かった天気もすっかり良くなり、爽やかな秋晴れでした。
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キャンベラを自転車で走ると、素晴らしい。ここは計画都市。主要道路に自転車専用レーンが完璧に整備されていて、走りやすいことこの上ない。また、キャンベラは標高550mの高原に位置しているので、高原を渡る風が心地よい。本当に、来て良かったと思いました。
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そして17:03、ついに目的地・国会議事堂に到着。ここで記念撮影して、私の30ドルチャレンジはついに幕を閉じました・・・
キャンベラからシドニーに帰るバスは18:00で終わってしまうので、私はバスターミナルに急ぎました(午後6時が終バスなんて、すごすぎるオーストラリア!)。バスターミナルに向かう途中、ちょうどうまい具合に人造湖Barley
Griffin湖を渡るのですが、この湖畔を渡る風がとても心地よい。ずっといつまでも、ここにたたずんでいたい気分でした。
−完−
参考までに、シドニーからキャンベラまで、30ドルより安く行く方法は他にもあります。例えば、CountryLinkでは2週間以上前にチケットを予約すれば片道$26で行けるし、もし学生であれば、各バス会社が提供する学生割引が使えておトク。例えば、Murraysの学割は$24.2、Greyhound&McCarffertysに至っては、$18というチケットも販売しているそうです(2004年4月現在)。
東京から3000円でどこまで行けるか?も、併せてどうぞ。
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