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四国一周お遍路(?)の旅−後編

5.石畳の宿

 今回の四国の旅では5軒の宿に泊まりましたが、一番良かったのは愛媛県内子町にある、石畳の宿(いしだたみのやど、0893-44-5730)です。

 この宿は和ろうそく・和傘などの伝統工芸品とノーベル文学賞の大江健三郎氏の出身地として知られる内子町営の宿で、市街地からはるか山奥に入った石畳集落の古い農家を移築して利用した宿泊施設です。このあたりは猫の額のような土地に棚田が並び、地元の人は葉たばこの生産などで生計を立てています。

 石畳の宿の管理体制はとてもユニークで、地元の農家の方々が交代で食事をつくったり、夜の当直に入ったりして運営しており、万事手作りの暖かみが感じられます。食事はすべて地元でとれた旬のものを使って、村の奥さん方が心を込めて作った素朴な味わいがあります。私たちが泊まった日に出されたのは豪快な山菜の天ぷら、中身の野菜はなんと17種類もあり、山椒の葉とかつつじの花とかバラの花みたいな、これまで食べたことのない山菜(?)が見事天ぷらに変身していました。もちろん、ウドとかタラの芽みたいな山菜天ぷらの定番もたくさん入っていて、とても美味。量がすごくて、とても食べきれませんでした。

 下が向けないほど腹が一杯になったころ、宿直のお兄ちゃんから「ゲンジボタルを見にいかないか」という誘いを受け、快諾。車で五分ほどいくと、小川のほとりにもやもや動く光を発見。私の視界には20匹ほどのゲンジボタルが灯台のように光を点滅させながら思い思いの方向に飛び交っていました。宿直のお兄ちゃんによると今日は雨が降った直後なのでホタルの数はいつもより少ないとのこと。3日前にはもう光の海というほどものすごい数だったそうです(真っ暗なので写真は撮れませんでした)。

 翌朝は上流の水車小屋まで散歩しました。石畳集落の水車は全部で三基、長年使われていなかったものを数年前地元の有志が復元したものです。石畳の宿で出されるご飯はここで精米されたものです。清流に洗われてギコギコと回る水車の傍らでしばし時間を忘れました。

 この宿は各雑誌にも紹介され、山里の豊かさと手作りの暖かさが楽しめるおしゃれな大人の宿としてかなり人気のようです。ご予約の際はお早めに。

写真をクリックすれば拡大できます

石畳の宿全景

宿近くの棚田

名物・山菜天ぷら

6.喫茶店が似合う温泉町、松山

 四国最大の都市・松山市。私たち一行は伊予鉄松山市駅前に車を停め、銀天街、大街道など目抜き通りを歩きました。とても驚いたのは松山という町はどこへ行っても喫茶店だらけ、それもチェーン店ではなく昔ながらのゆっくり座れるタイプの店がほとんどなのです。私は国内でこれだけ喫茶店の多い町を他に知りません(注3)

(注3)喫茶店が多い分、飲食店が高知に比べて断然少なく、この日朝からロクに食べてなかった私たちはちょっとひもじい思いをしました。「松山の人は外食しないのか?」と一瞬思いました。

 その他、松山は市電が縦横無尽に走っているし、道後温泉まで行けばマドンナという、「はいからさんが通る」の紅緒さんみたいな格好をした街角案内人がいて、まるで数十年前にタイムスリップした感じというか、町全体が大正ロマンを演出しているような雰囲気なのです。

 松山の郊外には道後という日本屈指の大温泉があります。夏目漱石をして、「何をとっても東京の足元にも及ばないが、温泉だけは大したものだ」と言わせた道後の湯の存在感は巨大です。もし道後がなかったら、松山そして伊予の国のイメージは随分違ったものになっていたでしょう。私たちは、もちろん「坊ちゃん」に描かれたあの道後の温泉(公衆浴場)に入り、女中さんの出す天目茶碗でお茶をいただきました。

 市電、喫茶店、マドンナ、温泉・・・これらが織りなす独特の都市景観が松山最大の魅力です。この町のファンも全国に多いのではないでしょうか。

7.讃岐と阿波

 今回の旅では、土佐(高知県)、伊予(愛媛県)に各二泊したのに比べ、讃岐(香川県)と阿波(徳島県)にはそれぞれ一泊しかできなかったので印象は多少薄いのですが、どちらも魅力ある地域で、いつかはじっくり旅してみたいと思います。

 讃岐と阿波の場合、土佐・伊予に比べると中心都市のインパクトがやや弱いと思います。例えば土佐には高知のはりまや橋、伊予には松山の道後温泉という、それだけで国全体をイメージできるようなランドマークがありますが、それに対して讃岐の高松市は四国の玄関口ということもあって町全体が支店経済都市みたいな印象がありますし、また阿波の徳島市には立派なお城こそありますが阿波の国全体をイメージできるだけのインパクトはありません。

 讃岐らしさ、阿波らしさはむしろ農村部にあると思います。例えば讃岐の国のシンボルは讃岐平野に点在する溜め池や、筍のようにニョキニョキ生えている小高い山だと思います。讃岐最大の観光地、琴平町のこんぴらさんの長い参道を登れば、讃岐平野の独特な景観が一望できます。また阿波のシンボルは四国最大の大河・吉野川でしょう。エジプトがナイルに育まれたように阿波の国は吉野川に育まれてきており、今も昔も吉野川に沿って町が並んでいます。川の両岸には脇町、貞光町のように阿波藍の生産・物流で栄えた古い町並みがいくつも残っています。

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市電の町・松山

讃岐平野全景

徳島県脇町・うだつの街並み

8.そして広島

 6泊7日の四国の旅を終えた後、私たちは広島の友人宅にお邪魔し、二晩過ごしました。四国を回ってきた後に広島に来てみると、「こりゃえらい大都市だなあ」と思いました。特に紙屋町、八丁堀、胡町と続く目抜き通りは規模といい賑わいといい、四国には見られないものです。やっぱりプロ野球球団とプロサッカー球団を擁する政令指定都市は一味違うわいと思いました。

 また、「こんな狭い土地によくこんな大都市ができたものだ」と思いました。広島というところは山が瀬戸内海のすぐそばまで迫っていて、大田川三角州の猫の額ほどの平地に建物がぎっしり詰まっています(とはいえ東京ほどの過密ではありません)。そして郊外の住宅地の多くは山を崩して造成したものです。ここまで平地に余裕がない大都市というのはおそらく神戸と広島くらいでしょうか。

 海と山の間にサンドイッチのように挟まった広島は美味しい食べ物、美味しい酒の宝庫です。今回は広島に着いたらまずお好み焼きで腹を満たして、翌日は安芸の宮島でアナゴ丼とカキ丼を食べました。広島を代表する酒・酔心の純米大吟醸は毎回のように買って東京へ持ち帰っています。

今回の旅では宮島のほか、山口県になりますが岩国の錦帯橋まで足を伸ばしました。錦帯橋の対岸は吉香公園という大きい公園になっていて、花菖蒲が満開でとてもきれいでした。また、岩国の米軍基地の軍人さんがたくさん来ていて、サイクリングに興じていました。

 そして、ついに東京に帰る日がやってきました。東京に着くとやたら人は多いし、電車は全然座れない上に人身事故で10分以上遅れるなど、実にゴミゴミして住みにくい所だと思いました。実家のある柏に着くと、早速スーパー銭湯に行って旅の疲れを洗い流してきました。今週末にはいよいよシドニーに帰ります。

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