ウィーンまでの遠い道
私が住んでいるオーストラリアのシドニーから、オーストリアの首都・ウィーンまで、国名こそ一字違いですが距離は1万7千キロもあります。地球半周、つまり南極点から北極点までの距離が2万キロですから、それに匹敵する距離の移動になります。本当に、気が遠くなるくらい遠かったです。シドニー〜成田が9時間、成田〜ウィーンが12時間という「距離の暴虐」もさることながら、それ以上に辛かったのが、飛行機の空席待ちでした。私たちが持っているチケットは、値段が安い代わりに空席があって初めて乗れるものです。シドニー〜成田間の移動は、空席が一つもなくて結局乗れず、まる一日ムダにしました(こちらも参照)。そんな痛い目は二度とごめんだということで、日本に着いた後、早速成田〜ウィーン間の空席状況を航空会社に問い合わせたところ、何とシドニー〜成田間以上に空席状況が厳しく、下手したら一週間ほど成田で足止めを食らう可能性もあるとのこと!念願のヨーロッパ行きに、にわかに暗雲が立ちこめました。
「こんなことなら、日本を経由せずに、シンガポールか香港経由でヨーロッパに行けば良かった」と、歯ぎしりするも後の祭り。そうこうしてるうちに出発日がやって来ました。4月13日の土曜日、千葉県柏市の我が家から成田空港まで1時間の道のりを、車で送ってくれたのは私の父でした。その日、父はちょうど3日間の休暇がとれ、一人気ままな東北方面へのドライブ旅行を企画していたので、朝からとても嬉しそうでした。運転しながら、「マナブ、どうせ空席なさそうなんだろ。もし今日乗れなかったら、その足で東北行こうぜ。気仙沼か釜石で刺身食おうよ。」
カマイシ、ケセンヌマ・・・何と甘美な響きでしょう(森進一か?)。父の申し出に、私と妻の心は動きかけました。何しろ最悪一週間の空席待ち覚悟、毎日毎日、「岸壁の母」みたいに成田行って虚しく時間をつぶすよりは、いま春爛漫、魚が美味しくて人情厚い東北を旅するのも悪くない。もしこの日空席がなかったなら、私と妻は確実に東北へ旅立っていたことでしょう。
成田の出発ロビーへ着くと、シドニーの空港では想像すらできないような人、人、人の群れ。ところどころに、300メートルを超える長さの蛇腹状の行列ができていました。それにしても、この賑わいは一体何なんでしょう??去年のテロで海外旅行を手控えていた人たちが一斉に出国しているのか、それとも日本の景気が徐々に回復してきたのか、よく分かりませんが、この超ラッシュ状態を見て、私は「こりゃ無理だ、十中八九、東北行きだなこりゃ」と思いました。今回ウィーン行きの便はANAとJALの両方、空席待ちを申し込んだんですが、まずJAL便はあえなく敗退、最後の頼みの綱・ANA便にすべてを賭けて、長い行列に並びました。10分過ぎ、20分過ぎ、出発時刻が迫ってくる。こりゃダメだ、と思った瞬間、妻が顔を高潮させて駆け寄ってきました。「ちょうど2つ空席が取れたよ。早くチェックインして!」・・・まさに奇跡です。神が我々をヨーロッパへ導いた、としか思えません。かくして、間一髪で我々のヨーロッパ旅行が実現したのです。
「ヨーロッパ行くよ」・・・父に短い挨拶をしたあと、我々2人は半ば駆け足でウィーン行きのANA便に乗り込みました。この便はオーストリア航空との共同運航便で、機体はANAではなくオーストリア航空のものでした。ヨーロッパの航空会社ですから、ボーイング機じゃなくてエアバス機です。座席はゆったりしていて、リクライニングの角度も大きく、快適。でも、それ以上に感動ものだったのは、全座席に液晶テレビがついてたことです。乗客全員にコントローラーが配られ、これを使って映画、音楽はもちろん、到着地ウィーンの観光情報やフライトインフォメーション、ニュースまである!私も妻も、感動で身体が震えました。その上、機内食も美味しい♪さすがに観光立国オーストリアだけのことはあります。BGMはヨハン・シュトラウスとモーツァルト・・・というご当地自慢ももちろん忘れません。これは絶対にお薦めです。
しかし、いくら最新鋭設備を誇っていても、12時間の道のりはやっぱり長かった。なんと、そのうち約10時間はロシアという国の上を飛ぶのです。信じ難い大きさです。この巨大な国土が尽き、ベラルーシ・リトアニアに入る頃、ようやくヨーロッパに来た、という気分になります。我々を乗せた飛行機が、ウィーン・シュヴェヒャット空港に着いたのは午後4時15分。でも日本時間では夜11時過ぎなので、すでに眠くなっていました。
いきなり、格安四つ星ホテルをゲット
ウィーンの空港は、ヨーロッパの首都空港にしては規模が小さく、ターミナルビルは古く、免税店の類いは数えるほどしかありません。荷物を載せるカートは有料で、1ユーロ(115円)とります。こう言っちゃ失礼だけどちょっと貧乏臭い空港に、両替所だけはいっぱい並んでいて、"Exchange"(英語)、"Wechsel"(ドイツ語)などの他、しっかり日本語で「両替」と書いてありました。いまオーストリアで使われている通貨は、もちろんユーロ。我々はすでにオーストラリアでユーロを入手しているので、両替所はパスしてさっそく観光案内所へ直行。
案内所では、金髪(当たり前だけど)のお姉さんが、流暢な英語で応対しててくれました。我々が、「ウィーンで2泊するんですが、市の中心部で、ダブルベッド(ヨーロッパではこれも当たり前)で一泊80ユーロくらいで泊まれるところはありませんか?」と聞いたら、「いま四つ星ホテルが90ユーロで泊まれるんですけど、それでもいい?」と聞いてきました、私たちはまだ、ヨーロッパのホテルの相場がどのくらいなのか知りませんから、90ユーロ(10,350円)というのが安いのか高いのか、判断がつきかねましたが、地図を見てみると便利が良さそうだし、パンフレットの写真写りも良かったので(当たり前か)、ここに決めました。案内のお姉さんはその後、「90ユーロというのは手数料の10ユーロが込みになった価格ですから、1泊目は90ユーロだけど、2泊目は80ユーロ(9,200円)でいいですよ」と言ってきました。「ふーん、そんなもんなのか」と思いながら、快諾。
その時は気づきませんでしたが、我々は後になって次の事実を思い知ることになります。それは、「今の時期、ヨーロッパの四つ星ホテルで一泊80ユーロというのは破格に安い」ということと、「ウィーンで泊まったこのホテルこそ、我々がヨーロッパで泊まったホテルの中で一番質が良かった」ということです。つまり、ヨーロッパ旅行全体を通して、ホテル運はウィーンが一番良くて、その後は下降線をたどることになるのです(最後に泊まったパリのホテルが最悪!)。要は、我々は最初に一番いい思いをしてしまったのです・・・
そんなことはつゆ知らず、我々2人は重い荷物を運びながら、シャトルバスと電車を乗り継いで、シュテファン大聖堂から北へ歩いて10分の距離にある、四つ星ホテル"Starlight Suiten"(住所:Renngasse 13, A-1010 Wien、Tel +43(1)5339989)にチェックインしました。受付のお姉さんはとても感じの良い人で、親切。ウィーン観光についていろいろ教えてくれました。その後、ちょっとワクワクしながら部屋に入ると、なんと、信じ難い広さ!コンドミニアムみたいに台所・リビングと寝室が分かれていて、特にリビングは20畳以上ありそうな広さ。明るくてとても清潔だし、ミニバー・給湯はもちろん、TVの衛星放送もあり、データポートを使ってインターネットも可能。デザインはシンプルで、居住性抜群。「これで80ユーロは安いなあ」と思いつつ、入り口のドアのところに貼ってある料金表をみると、なんと、今の時期のダブル通常料金が155ユーロとなっていました!つまり、我々はほぼ半額で泊まってしまったことになります。なんてラッキーな・・・キャンペーン料金恐るべし。
部屋の外に出て、階段を下りるとおしゃれな食堂がありました。我々は毎朝ここで、バイキング形式のコンチネンタル・ブレックファストをいただくことになります。その下の階にはジムがあり、サウナまでついていました。もちろん、我々はいつでも使うことができます。感動した妻は、「これから、ヨーロッパ旅行でこれ以上いいホテルにはもう泊まれないかも知れない」と言ってました。この予言は、見事的中することになります。
時計を見ると午後6時。外は7時過ぎまで明るいので、我々は街に繰り出しました。シュテファン大聖堂の近くには食堂がたくさん集まっているのですが、その多くは何と「パスタ屋」・・・一瞬、ここはイタリアかと思いましたが、去年ヨーロッパを旅した友人の、「パスタはイタリア以外では絶対に食べてはいけない(まずい・・・)」という言葉を思い出し、結局、「折角だからウィーンらしい料理を食べよう」ということになりました。歩き回って、見つけたのが、Gutenbergというドイツ料理(?)の店。我々はここで、ビーフ、サワークラウト(酢キャベツ)、ガーリックスープなどをいただきました。味はまあまあでした。たっぷり食べた後は、人間の自然な摂理として、睡魔が襲ってきます。特に私は時差ぼけがひどく、半端じゃないくらい眠かったので、すぐホテルに戻り、爆睡しました。
皇帝の都の街歩き
今振り返ると、今回のウィーンの旅はちょっと心残りでした。この美しい街を思う存分歩くことができなかったからです。その理由は、@時差ぼけと疲労で日中寝てしまった、A一日中、冷たい雨が降っていた、Bホテルの居心地が良すぎて、あまり外に出る気にならなかったからです。次回行く時は4泊くらいして、時間に余裕を持ってじっくり街歩きしたいです(何年後になるか分かりませんが)。
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