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考察−アジアンな街

目次
1.アジアにはまる日本人 2.日本の街のアジアン度
1.アジアにはまる日本人 文頭に戻る

日本人の年間出国者数はすでに1,500万人を超え、世界第二位だという。その大部分は海外旅行だから、赤ちゃんからお年寄りまで含めて、延べ10人に1人以上は毎年海外旅行を楽しむという時代になった。近い将来、「一億総出国」時代が来るのかも知れない。

海外旅行者の大部分は1週間程度、どんなに長くても1ヶ月を超えないという短期間の旅行者だが、少数ながら旅行先の街の魔力にはまってしまって、フラフラとそこに住み着いてしまうという連中もいる。思えば10年前の若き日、私自身も台湾・台北の魔力にはまり、結局1年間も過ごして奥さんまで見つけた挙げ句、「東京に帰りたくない」症候群に陥ってしまったこともある。私の知り合いには、現地に5〜6年、10年以上の長期間住み着き、現地で仕事や所帯を持ち、一挙手一投足から考え方からすべて現地人化し、もはや日本社会には適応不可能なところまでいってしまった者が数え切れないほどいる。

日本人にとって、はまりやすい海外の街はいくつかある。その代表格がハワイだろう。次いでNY、LAなどアメリカ本土の都市と並んで、バンコク、香港、バリをはじめとするアジアの街も大変な吸引力を持っている。近年はオーストラリアのゴールドコースト、ケアンズなどが新たな「はまり先」として登場してきている。私自身はというと、断然「アジア派」である。類は友を呼ぶのか、私はここ10年くらい、アジアにはまってしまった日本人と随分親しくしてきた。彼らは世代、性別ともにバラバラであるが、よく観察すると、彼らがアジアの何にはまるのか、大体次の二つの類型が浮かび上がってくる。

タイプA:華人パワー大爆発の街にはまるタイプ

香港、台北、上海といった中国人の街の発散するパワーは凄まじい。街全体がギラギラと脂ぎって、ものすごい勢いでエネルギーを発散している。人が集まればたちまち縁日のような街をつくってしまい、夜はネオンが煌煌と輝く不夜城と化す。さらにこの巨大なエネルギーが無秩序に発散されているため、街はいつも混沌の巷である。例えば道路、片側3車線の道路の2車線までが駐車違反の車に占拠されていたり、歩道には歩行者、自転車、バイク、自家用車、屋台という5種類の乗り物が走り抜ける目茶苦茶さ。そしてこの環境の中で生き抜く人々のたくましさ。例えば、大学生が夏休みのバイトでやった屋台が大ヒットしてベンツを買ったとか、おばちゃんが株式投資で大儲けしてマンションを2棟買ったといか言う話は、万事が秩序正しくシステム化された日本社会から来た者にとってはとても刺激的で魅力的に聞こえる。実際、台湾遊学中の知り合いの一人は現地の人間に影響されて台湾で事業を起こしてしまった。

こういう華人系の街にハマる人間は大抵がエネルギッシュなお兄さんお姉さんたちで、あまりにも静かでおとなしい日本の街に飽き足らず、刺激を求めてやってきた人が多い。最近は元気の良いお姉さんたちの台頭が著しく(特に関西人)、現地人に伍してしっかりと適応する例が多い。また、彼らはエネルギッシュな分、日本に帰っても適応能力は結構高い。

タイプB:南国けだるい系の街にはまるタイプ

タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、フィリピンといった東南アジアの国々にはけだるい南国の風が吹き抜けている。年中気温が20度以下に下がらないという熱帯の気候のなかで1000年以上も暮らしてきた彼らの生活ぶりは、時間感覚にせよ仕事に対する考え方にせよ完全に南国のそれである。約束の時間に2時間遅れても平気、仕事は「ちょっと疲れたから」何の未練もなくやめる。一家の主は家計を支えるといった重苦しい責任など微塵も背負わず、年中「誰かが助けてくれるさ」式の青年失業家が国を埋め尽くしている。彼らは中年になっても、老いを意識する年齢になっても万年失業家のままであることが多い。しかし、彼らはそれでも生きている。明日に対する不安はまるでないかのように、屈託なく生きている。そうしたけだるい男たちに加え、1年にコメは2〜3回収穫できる、フルーツや野菜がふんだんに取れるという熱帯の豊かな自然の恵みが、この南の国々に甘ったるくて芳醇な雰囲気をもたらしている。その雰囲気は、万事ギスギスして世知辛い日本の社会から来た者にとっては、まさにヒーリング効果満点である。

こうした南国けだるい系の街にはまるのは、優しすぎる、要領が悪すぎる等の理由で日本の企業社会に適応できない人々が多い。それも年齢を問わず男性に多い。日本社会には優しくてトロい人間は男女問わず沢山いるのだが、特に男の場合社会人になると、そうした優しさとトロさは「悪」とみなされることが多く、その結果大量の不適応の男たちが大量に放出される。そんな彼らが南の国にやってくると、自分自身よりずっとトロくて責任感もないのに元気に生きている何千何万という男たちを見て、ここに安住の地を見出すケースが多い。彼らが現地に住み着くと、ただでさえ低い日本社会への適応能力は更に低下する。でも、人間、自分に合った土地で生きるのが結局一番幸せなんだと、私はつくづく思う。

というわけで、エネルギッシュな人間とトロくて優しい人間という、全く対照的なタイプの人間がアジアの街にはまっていく。面白いことに、タイプAの人は同じアジアでも南国けだるい系の街にあまり魅力を覚えないし、逆にタイプBの人間は中国人系の街が嫌いである。中国人はアジア一番の合理主義者で、南国の民とはあまりにも対照的だからだろう。私自身はといえば、エネルギッシュな反面、人一倍トロいところがあるので、どちらのタイプの街も好きである。

華人パワー系の街の代表選手は何といっても香港、次いで上海、台北、ペナン、シンガポール(やや整然としすぎているが)であろう。またタイプはかなり異なるが、プサン、ソウルといった韓国の街のエネルギーにぐっと感じる人もいる。こちらの方はキムチパワー大爆発といったところか。一方、南国けだるい系の街の代表格はマニラ、ジャカルタ、ホーチミン、ヤンゴン、チェンマイ、バリ(やや観光地化されすぎているが)といったところか。面白いことに、バンコクは奇跡的に華人パワー系と南国けだるい系の両方の性質を兼ね備えた街である。したがって、この街はどちらのタイプの人間も引き付け、満足させてしまう。まさしく日本人を捕らえて放さないゴキブリホイホイのような素晴らしい街なのである。

2.日本の街のアジアン度 文頭に戻る

考えてみれば、日本もアジアの一国。わざわざ出国しなくても、国内にもアジアンな街、アジアンなエリアは各地に点在するはずである。ところが、日本に華人パワー大爆発の街とも、南国けだるい系の街とも異質な性質である「秩序」と「規律」が支配し、環境が整備されすぎて生活臭のしないような街が大部分を占める。もちろん、私たちはこうした整備された環境のもとで安心して快適な生活を送れるわけだが、人間ならば時には混沌と無秩序に身を置いてみたくなるし、また時には甘ったるい南の風に吹かれてみたくなる。そこで、日本の国内でできるだけアジアンな街を探してみた。

国内都市アジアン度
(評点の基準:バンコクを10とする)

  都市名 華人パワー度 南国けだるい度 総合点 代表的アジアンスポット
1 那覇 6 9 15 国際通り、牧志公設市場
2 福岡 8 4 12 天神、中洲
3 大阪 8 2 10 ミナミ、鶴橋、京橋
4 東京 5 1 6 高田馬場、池袋、新宿、アメ横
5 宮崎 0 5 5  
  バンコク 10 10 20 全域
  台北 12 5 17 華西街、西門町


正直なところ、いま日本の国内で「アジアンな街」と呼べるところは、県庁所在地レベルでは那覇、福岡、大阪の三都市くらいしかないと思う。

那覇:ここは日本ばなれ、もとい本土ばなれした南国系アジアンな街である。那覇空港に下り立っただけで、全身がけだるく甘ったるい南の風につつまれる。その雰囲気は東京よりもフィリピンのマニラあたりに近い。この日本にありながら、4、5人が当たり前という子だくさん、夜2時から遊びに行くという宵っ張り、徒歩5分の距離でも決して歩かず車に乗りたがる、待ち合わせ時間に遅れるのは当たり前、無類のお祭り好き、歌好き、踊り好きという南国的な特徴をすべて兼ね備えている、アジアフリークにはうれしい街なのである。加えて、日本とは思えない、牧志公設市場のエキゾチックな「濃い」品揃え、「何でもあり」という無秩序ぶりも楽しい。

福岡:南国系というより、むしろ混沌パワー系の街である。ここには、日本最大の屋台街がある。一辺800メートルにわたる屋台街では、ラーメンだけでなく、おでん、もつ焼きからお好み焼きまであり、さんざん不衛生だと攻撃されながらも、しっかり博多っ子の食文化として根づいている。食べ物が安くてうまいことに加えて、タクシーが異常に多いこと、運転マナーが乱暴なこと、やたら宵っ張りなところはかなりアジアしている。さすがに「日本一元気な街」と言われるだけあって、その活気、パワーには圧倒される。中国や台湾あたりの人にとってはさぞかし住みやすい街だろう。

大阪:ここも福岡同様、混沌パワー系の街である。ミナミと言えば、言わずと知れた江崎グリコの巨大看板、仰々しいかに道楽、食い倒れ人形など、これでもかこれでもかというだめ押し感覚が中国系アジア的である。加えて、行列してまでも美味いものを食べようという大阪人の食に対する情熱、違法駐車の列、エスカレーターで誰もが歩くというせっかちぶりも、香港あたりと似ていて楽しい。私などは、大阪に行くとやたら元気になり、新幹線で東京に戻ってくると途端に元気がなくなってしまうほどだ。

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