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麿(まろ)はよそ見をして床におかずを落としてしまったでおじゃる。仲間はそんな麿を阿修羅と呼びて恐れおののく世の運命(さだめ)。今日(けふ)も蹴まりの仲間に入れてもらえず一人海を見ておればそこにフェイントの局あらわれけり。
「あな恐ろしや。おかずを落とす魔物を見たり。春あけぼのにおかずを落とす魔物を見たり。」麿は耐え難き悲しみに部屋へとこもり泣きはらすいたづらに。
「局よ麿が嫌ひでおじゃるか。」されでもそれはフェイント。局は麿にほの字なり。その夜麿の部屋にて局いはく「上様を誰より慕ふきもちがわらわにあのやうなフェイントを。素直にあらぬこの身を許したまえ。よよよ」と、号泣しせり。有りのままの心を告げぬ乙女心の複雑さたるやこれいかに。
あくる日、廊下にて顔を合はせし麿と局。すれ違ひ様袖の下より恋文をもらひ受け候へば部屋に戻りて早即に読みにけり。「降る雨に おかずを落とし 君なれど 我が恋の華 フェイント咲き。」
何と、これもフェイントだったでおじゃる。好かれてはならぬこの身か。絶望の淵に沈みし麿ああけびの花咲く都をあとにわんぱく相撲を見物にいく小道かな。
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