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ポスト・バブルのシドニー不動産事情

第7回:駅近は一生の財産か?


 「駅近は一生の財産」、という言葉があります。日本の大都市圏では、鉄道駅の徒歩圏、特に都心ターミナル駅から乗換えなしで行ける駅から歩ける立地が、そうでない立地に比べて非常な価値を持つことから、この言葉が生まれました。私自身、もし東京で家を買うなら、間違いなく便利な駅の徒歩圏を狙うでしょう。

 さて、ここシドニーでも、「駅近は一生の財産」なのでしょうか?シドニーで不動産を買うにあたって、「駅近」というファクターをどの程度考慮する必要があるのでしょうか?今回はこのテーマについて、考えてみたいと思います。

 ご存知の通り、シドニーにはCityrailという近郊鉄道網がありますが、人々の鉄道通勤への依存度はさほど高くありません。2001年国勢調査では、通勤に鉄道を利用する人が5%、クルマを利用する人が27%という結果でした。現時点では、シドニーはクルマ社会だといえましょう。ですが、人口増加に伴う道路渋滞や、鉄道駅付近の高層マンション建設などから、次第に鉄道通勤にシフトする動きもみられます。

 結論から先に言いましょう。シドニーで駅近は一生の財産か?私の答えは、"Yes or No"です。”Yes”に力点を置くか"No"に力点を置くかは、地域によります。私は、少なくとも次の3つの地域に分けて考えるべきだと思います。

海岸沿いA地帯...駅近=マイナス要因

 南太平洋、或いはシドニー・ハーバーに面した地域は高級住宅地が多く、その希少価値やプレステージを守るため、鉄道を忌避する傾向が強いようです。

 例えば、2000年シドニーオリンピックの際に、Bondi Beachまで鉄道を延長する計画が、地域住民の強い反対に遭って挫折したことは記憶に新しい。鉄道開通による利便性の向上よりも、この地域が「どこでもあるような住宅地」に変貌し、資産価値が下落してしまうことを地域住民は恐れたのです。

 Bondiから海岸沿いに南下するIllawarra線や、ハーバー南側を通るInner West線の沿線では、鉄道が通っているサバーブよりも、鉄道の通らない海岸・ハーバー沿いのサバーブの方が、軒並み資産価値が高い。例えば、RockdaleよりBrighton Le Sandsの方が、HurstvilleよりBlakehurstの方が、PetershamよりLeichhardtの方が、プレステージの高い住宅地と見なされ不動産価格が高い。これらの地域では、鉄道が通ることはマイナス以外の何者でもないようです。

内陸近郊B地帯...駅近=プラス要因

 しかしながら、シドニーの総人口のうち、海岸・ハーバー沿いに住める層はごく一握り。人口の大多数は潮風の届かない、内陸部の住宅街に住んでいます。そういうエリアでは、鉄道が通ることは即、利便性の向上を意味し、資産価値の向上に結びつくケースが多いようです。

 その一番の好例がEppingの駅です。すでにNorthern Lineの快速停車駅である当駅は、Chatswoodと直結する新鉄道の開通を数年後に控え、その暁には、シドニー北西部におけるメインターミナルとして不動の地位を確立するとみられています。その関係で、Eppingの駅徒歩圏は、今ものすごく資産価値が上がっていて、周辺地域との格差が一目瞭然です。「駅近は一生の財産」という言葉が、Eppingでは生きています。

 その他、大きな郊外ターミナル駅であるChatswood、Hornsby、Strathfield、Parramattaなどでも、駅周辺に商業施設や新築高層マンションが多く立地し、その関係で駅徒歩圏の資産価値が高くなりつつあるようです。実際、これらの地域の不動産広告には、「駅から歩ける」という宣伝文句がよく出てきます。

 但し、どの沿線、どの駅でも駅近であればよいというわけではありません。例えばシティと直結し、本数も多い鉄道沿線の方がそうでない沿線より有利だし、また同じ沿線でも快速が停まり、駅前に便利な商業施設がある駅の方が評価が高いことは言うまでもありません。

遠郊C地帯...駅近=マイナス要因

 Blacktown以西、或いはLiverpool以南の地域は、シティから35km以上離れた「遠郊」です。この辺は完全なクルマ社会で、鉄道依存度が低いため、駅の徒歩圏であることがあまり積極的な意味を持ちません。それどころか、駅から離れた住宅街の方が資産価値が高いケースが多いようです。

 というのは、鉄道駅の周辺に古くからの住宅街が広がっているため、大規模な新規住宅開発は駅から離れた地域で行われることが多いからです。例えば、Blacktownエリアの住宅開発は、当駅から北へ数km離れたParklea、Rouse Hillなどが中心で、住宅開発の進展に伴い、Blacktown市街地に住んでいた比較的お金持ちの層が、それら新興住宅地に「移住」していく傾向がみられます。

 同様に、Liverpool市街地からHorsley Park、Campbelltown市街地からCamdenへの「移住」現象も見られ、その結果、駅のある旧市街地よりも駅から遠い新興住宅地の方が資産価値が高くなっています。またPenrithでも、駅周辺より新興住宅地のGlenmore ParkやCranebrookの一戸建ての方が不動産価格が高いようです。


 以上、シドニー圏の地域特性と「駅近の価値」との関係について語ってきました。これからシドニーで家を買う人の多くは、たぶん「内陸近郊B地帯」で買うのでしょうから、駅近の積極的な価値に目を向けてもいいのかもしれませんね。

著者:まなちゃん@Parramatta
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eメール:mana33chan@aol.com