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前回号で、「シドニー西部地区はまだ住宅バブル崩壊を知らない」と書きましたが、それでもバブル崩壊の足音は、シティの方角からヒタヒタと迫りつつあるようです。それでも今のところは、First
home buyer特例の恩恵もあって若い人たちが西エリアの物件をどんどん買ってくれているので一息ついていますが、それが一段落したら、西部も含めてシドニー全体の不動産市場が低空飛行ムードに包まれそうな気がします。少なくとも、過去数年間のような不動産ブームが戻ってくることは当分ないでしょう。それを嘆かわしいと思うか、「買いやすくなった」と喜ぶかは、その人の立場次第です。
ですが、バブルが崩壊しても誰もが羨むような魅力的な立地であれば、不動産の価値もそう下がるものではありません。そこで今回は、立地の魅力について、少し突っ込んで考えてみたいと思います。今回のキーワードは、
Gentrification (ジェントリフィケーション)
です。あまり耳慣れない言葉ですが、和訳すれば、「裕福な住民を呼び込む地域づくり」になるのかな。Gentryは英国に古くからある言葉で「旦那衆(お金持ち)」という意味ですから、Gentrificationは「旦那衆に好まれる地域づくり」というニュアンスになります。これは英語圏の地域開発や不動産関連記事に時々出てくる言葉で、地域イメージの向上や住民の資産価値上昇に直結するものとして考えられています。
シドニー圏のGentrificationの実践例として、一番有名なのがKings
Crossでしょう。このエリアは古くから「シドニー最大の歓楽街」として知られ、その「セックスと犯罪」のイメージは優良住宅街の形成には明らかにマイナスでした。ですがここ数年、地域イメージの浄化を目指した官民挙げての努力の甲斐あって、風俗店の数が大きく減り、犯罪都市のイメージも薄れ、その結果、この地域に高級マンションが建ち並び、最近では裕福なヤッピーやゲイカップルが住み着くという現象もみられます。
シドニー全体を見渡せば、ここ数年でGentrificationの恩恵を最も大きく受けたのは、インナーウェスト地区でしょう。特にシドニーハーバーに近いBalmain、Leichhardt、Drummoyneといったサバーブの躍進が目立ちます。これらの地域は、もともと「肉体労働者の街」の色彩が強かったのですが、ここ数年、各地区の特色を活かした街づくりと、シティや水辺に近いという立地の良さも幸いして、「オープンカフェやレストランの似合うおしゃれな街」としての評価を確立し、若くて裕福なプロフェッショナル層に選ばれる住地となりました。特に象徴的なのが、Leichhardtに登場した商業・住宅複合施設Italian
Forum。すでにイタリア風モダンを演出する当サバーブのランドマークになっています。
さらに西に行けば、もう少し荒っぽいGentrificationの動きが見られます。シティから西へ18km、オリンピック公園西側にあるAuburnは、もともと中近東系の難民やその家族が大量に住み着き、そのため白人住民が逃げ出したという過去を持ち、郊外住宅地としてのイメージは決して芳しいものではありませんでした。ところがここ数年で街の様相は一変しました。Parramatta
Road沿いに大型商業施設が続々と進出し、駅前では総戸数471戸という、Italian Forumをはるかに上回る規模の住宅・商業複合施設Auburn
Centralが現在建設中。利便性の飛躍的な向上により新住民が増え、地価も上昇中です。
Auburnと目と鼻の先にあるParramatta地区では、歴史伝統を活かしたGentrificationが進行中です。19世紀半ばからシドニー郊外都市として住宅建設が進んだ当地区は「古民家の宝庫」。Federation、Georgian、Victorianなど、各時代の特徴を活かした「味のある」古民家の多様さと豊富さは、他に類例をみないほどです。Parramatta市街地に隣接するHarris
ParkとNorth Parramattaでは、そうした古民家が税理士、法務、ITなど、SOHOビジネスの事務所に転用され、近隣にプロフェッショナル層が住み着くなどの新しい動きがみられます。
上にみるように、一言でGentrificationといっても、その形態は地域により千差万別です。ですがその内容を社会学的にみれば、「地域人口に占める富裕層の割合が増える」→「地域の購買力が高くなる」→「地価(資産価値)が上昇する」→「貧困層がその地域に住めなくなる」→「富裕層好みの街区が形成される」→「富裕層人口がますます増える」という循環現象がみられます。こうした循環を起こすことに成功したサバーブの資産価値は上がりやすく、下がりにくいと思われます。
ここで一つ注意したいのが、「すでにGentrification済みの地区は、すでに値上がりしてしまい、これ以上の値上がり余地が少ない」と思われることです。例えば、イーストやノース地区の大部分、そしてインナーウェストの一部地区は、すでに地域人口の大部分が富裕層になり、これ以上の「地域富裕化」の余地が少ないと考えられます。今後はおそらく、「超富裕エリアになりそうな地区」と「富裕エリアのまま終わりそうな地区」に二極分化し、前者の地価は上がり、後者は下がることになるでしょう。
逆に、「地域富裕化」の余地がまだ大きく、今後Gentrificationが進みそうな地区は、資産価値上昇を狙う人にとっては格好の物色対象と思われます。「じゃ、具体的にどの地区が狙い目なの?」と聞かれると難しいのですが...「シティからの距離がそれほど遠くなくて、交通の便が比較的良くて、凶悪犯罪などのマイナスイメージがあまりなくて、住環境もさほど悪くなくて、市街地再開発や交通インフラ整備が進行中で、その割に地価の安いところ」という基準で探せば、当たらずとも遠からずなんじゃないでしょうか。
著者:まなちゃん@Parramatta
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