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シドニー日記・職業生活編第119回

海の見える一戸建てを買うぞ!−完結編 (2005/1/30)


 最近私の身辺は、中国・大連への転職話が中心で、シドニーでの家購入の話はとりあえずお預け、になったと思いきや、実はこちらの方も、大団円に向かって着々と進んでいたんですよね。今回、いよいよ完結編です。

最初のオファー失敗!

物件:Parramatta, 絶景リバービューユニット(2ベッド、中古)
敗因:チャイニーズ・ブラックマネーに負けた??

 前回(第3回)で紹介した、パラマタの超一等地にある全面リバービューの2ベッドユニット(築20年強)を是非とも手に入れたくなった私は、2004年11月25日(木)、ついにオファーを出しました。その額は、34万1500ドル!

 この物件の当初の売り出し価格は、34〜38万ドルでした。私は、この範囲内のオファーであればオーナーがOKするかもしれないと思い、まずは、下限に近い34万1500ドルのオファーを出してみました。しかし後になって、このオファーは低すぎた!ということに気がつきました。

 オファーを出した翌日、不動産エージェントから電話がかかってきました。彼曰く、「バイヤーの中で、すでに35万以上提示した人がいる」、「でもオーナーは、35万5千以上でないと絶対に承諾しないと言っている」、「お前はそこまで出す気があるのか?」・・・すでに、戦いは35万ドル超のレベルに達していたのです!

 熟考の末、私はこの物件を諦めました。34万台前半なら買う気満々だったけど、35万以上出せるかといわれると、そこまで頑張る気にはなれなかったのです。確かに一流ホテル並みの絶景だし立地も申し分ないけれど、よく考えれば、ここはシティでもビーチでもない、パラマタなのです。2ベッドユニットなら中古が27〜28万ドルで買え、34〜35万も出せば新築が狙える都市なのです。また予想賃貸収益(週280〜285ドル)から逆算しても、34万ならいいけど35万ドル以上の価値はないと思ったのです。

 その数日後、このユニットはめでたく成約と相成りました。ネットで成約価格を調べてみると、なんと38万ドル!!これは売り出し価格の上限、まるで一昨年のバブル期を思い出させるような、強気の売買でした。

 後日、私は職場の仲間(香港人・女性)と立ち話しして、「信じられん!パラマタの2ベッドで38万だよ。一体誰がそんな金を払えるんだろう?」とボヤきました。そしたら彼女はこう言いました。「パラマタのユニットなら、買ったのは中国(大陸)人でしょう?たぶん現金で買ったんじゃないかしら。あの人たちはむちゃくちゃお金持ってるし、しかもブラックマネー(黒銭)だから・・・ユニットの売買って、マネーロンダリングの手段として使われることがよくあるのよ!」

 もちろん、真偽のほどは知る由もありませんが、今回のユニット争奪戦は、「チャイニーズ・ブラックマネーに負けた」と思えば、口惜しいけれど諦めもつきます。要は世の中には、お金持ちがたくさんいるってことです。

二度目のオファー失敗!

物件:Parramatta East, 3ベッド一戸建(土地450u、中古)
敗因:オファーを出すのが一日遅れた

 ユニット争奪戦に敗れた週末、奇しくも、私は近所ですごい掘り出し物を見つけました。前回(第3回)でも紹介した、我が家から歩いて2分、土地450u付き、3ベッドルーム、二重レンガ造りの一戸建です。この物件は、立地条件や周辺相場を考えると50万ドルしてもおかしくないのに、オーナーがよほど売り急いでいたのか、45万9千というかなりの割安価格で売り出されていました。

 土曜日、40℃のうだるような暑さのなか、私は一人で物件を見にいき、これが大変気に入りました。そして、絶対にオファーを出そうと決意しました。しかし、そう考えていたのは、私だけではありませんでした。あの日、私と一緒に物件を見にきた子連れの若い中国人夫婦も、同じことを考えていました。しかも、彼らの行動は私より早かった・・・

 つくづく残念だったのは、あの日、私の妻が仕事で海外に行っていたことです。住宅購入は何十万ドルもする大きな買い物ですから、もちろん私一人の一存では決められません。私が気に入り、妻も気に入り、「絶対に買うぞ!」という二人の合意なしには、前に進めません。しかし、国際線乗務員という妻の仕事柄、月に4回ある週末のうち約2回しかシドニーに居られません。妻の帰りを待っているだけで、一週間、二週間と時間を空費するわけで、その分意思決定も遅くなります。

 しかし、この超お値打ち物件に関しては、妻の帰りを待っているうちに絶対に売り切れてしまう!と判断した私は、香港のホテルにいる妻に国際電話をかけ、私の一存でオファーを出していいか、打診してみました。これは、我が家にとっては異例中の異例といっていい。何しろ、妻が一度も内見してないのに、40万ドル以上のオファーを出すわけですから・・・もちろん、その辺の無理は承知でしたので、私は、この物件がいかに素晴らしいか、いま買うことがいかにトクであるかを、時間をかけて辛抱強く説明しました。その甲斐あって、妻は、何とかOKしてくれました。

 2004年11月30日、火曜日。私は44万2500ドルでオファーを出しました。しかし、時すでに遅し・・・例の中国人夫婦は、その前日にすでに、売買契約書にサインしていたのです!こうなったら、私はもう手も足も出ません。諦めるしかありません。

 むちゃくちゃ口惜しかったです・・・私は思わず、妻の仕事を逆恨みしてしまいました。地元でこんないい掘り出し物を見つけても、妻の仕事柄、なかなか内見もできず、早い意思決定もできない。夫婦揃ってシドニーにいる一般の人たちに比べて、どうしても出遅れてしまう。この物件が魅力的であっただけに、無念さは一層つのります。

最初にオファーした物件
−成約価格:380,000ドル−
二度目にオファーした物件
−成約価格:450,000ドル−

人生の転機

 二回続けて「大魚」を逃した後、我が家の不動産購入熱は一旦消えたかに見えました。折りしも世はクリスマスシーズンに突入していましたから、物件が市場に出回るのは、翌年の年明けを待たねばなりませんでした。

 しかし皮肉なことに、年越しとともに続けざまにやってきた大きな人生の転機が、私を再び不動産購入に駆り立てることになりました。

 その一つは、私がIBM中国への転職に成功したことです。エッセイ「中国出稼ぎ計画」で詳しく書きましたが、私は2005年2月末にはシドニーを引き払い、翌3月から中国の大連で働くことになりました。今後のことはまだ未定ですが、少なくとも2〜3年は中国で働くことになるでしょう。

 もう一つは、妻の「おめでた」です。妊娠が発覚したのが2005年1月14日、その時点で「妊娠5週間」と診断されましたから、不動産争奪戦に負けて間もない時期に、実はちゃっかり子種が仕込まれていたことになります。今後順調にいけば、出産予定日は今年9月19日。

 これは、我々夫婦にとっては大変嬉しいことです。妊娠すれば、妻の勤め先から育児休暇がもらえます。そのおかげで妻は仕事を失うことなく、私と一緒に中国に行けることになったのです。言い換えれば、私が中国で単身赴任しなくても良くなったのです。めでたしめでたし。

 問題は、その後のことです。妻が育児休暇を終えて、子連れでシドニーに戻り仕事に復帰した時、私はおそらく、まだ中国で働いていることでしょう(いずれは、シドニーで合流するつもりですけどね)。妻の職場はもちろんシドニー空港なのですが、いま住んでいるパラマタの家は、空港からちょっと遠くて、クルマで片道40〜50分かかる上に、タクシーに乗れば60ドル近くかかってしまいます。だから妻としては、もっと空港やシティに近い、便利の良いところに住みたい・・・

 もう一つのファクターは、私がIBM中国への転職に伴い、今年2月22日をもって、IBMオーストラリアを退職してしまうことです。一旦退職してしまえば、オーストラリア国内での収入がなくなり、ローンを組みたくても組めなくなってしまいます。だから、まだIBMオーストラリアに在籍している今こそ、ローンを組んでシドニーで物件を買う最後のチャンスなのです。

 そんな状況のなかで、我が家の不動産購入計画が再燃してきました。しかも、今回はタイムリミット(中国行き)が間近に迫っていますから、素早く物件を決めて、とっとと買ってしまわねばなりません。

 妻の勤務地や資金計画など、種々のニーズを考えた結果、私は、こんな物件に照準をしぼりました。

場所:Inner West地域 (シティ・空港とパラマタとの中間にある住宅地)
交通:鉄道駅、あるいは主要バス停から歩いて10分以内
間取り:妻が子連れで住むだけのスペースがあれば良いので、2ベッドのユニットで十分
価格:30万ドル台まで
その他要望:階段の上り下りがないこと、女性が一人で住めるくらい治安が良いこと、閑静なこと、etc.

 次に、私はInner West地域を歩きまわり、どのサバーブが上の条件に合いそうか、調査してみました。その結果、AnnandaleSummer Hillという二つのサバーブが良さそうだ、という結論に至りました。

Annandale(アナンデール):シティから西へわずか3〜4km、Inner Westではイメージの良い住宅地で、商店街にはスタイリッシュなカフェレストランやベーカリーが並ぶ。鉄道駅はないが、サバーブの北端部をライトレール(路面電車)が通り、Rozelle Bayの駅がある。また数年後、シティを東西に貫通するトンネルが完成すれば、一気にボンダイビーチまで出られるようになるので、資産価値の上昇も期待できる。但し、シティに近くてイメージが良いエリアだけに、物件の相場はさすがに高い。あと、空港にも近いため、飛行機の騒音問題も多少ある。

Summer Hill(サマーヒル):シティから西へ7km。鉄道Inner West Lineの沿線にある、小さくて静かなサバーブ。Annandaleほどの華やぎやブランド価値はないが、住環境も治安も良い、ファミリー向きの着実な暮らし向きエリア。問題は、市街地が小さすぎることだが、近隣にAshfieldやHaberfieldの商店街があり、歩いて15〜20分で行ける。また鉄道駅があるため、電車でシティにも出やすいし、パラマタやカブラマタ、フレミントンマーケットへも乗り換えなしで行ける。飛行機の騒音も多少あるが、Annandaleほどではない。物件の相場はAnnandaleより1〜2割は安い。

 2005年1月22日(土)、私は妻と一緒に、AnnandaleとSummer Hillを中心に、物件を4つほど見ました。その中で見た、Summer Hillの物件が大変気に入り、夫婦合意のもと、オファーを出すことに決めました。概要をいうと、こんな物件です。

立地:Summer Hill駅の北口、徒歩3分
環境:Cul de Sac(袋小路)になっている緑豊かで閑静なストリート沿い。電車騒音も気にならない。
建物:二階建てで築40年前後。全6棟の小規模ユニットで、例の物件は一階にある。
間取り:2ベッドルーム+台所、リビング、バスルーム(屋内55u)。プラス専用庭(8u)、車庫一つ(13u)。シドニーにしてはコンパクトなサイズ。
その他特徴:リビングは日本並みのサイズだが、台所と別々なのはポイント高い。ランドリーはバスルームに併設。各ベッドルームには大きな窓があり、専用庭もあるので一戸建て感覚で住める。
売出価格:当初34万9千で売り出し、その後33万9千まで値引き
予想賃貸料:週270〜280ドル

 この物件は、何といっても立地が抜群です。駅から徒歩わずか3分、道は平坦で交通量も少なく、歩きやすい。しかも1階にあるので、階段の上り下りがありません。妻が重い荷物を持って駅との間を往復するにも便利です。また、職場(空港)までの距離がわずか7〜8kmなので、タクシーに乗っても$20前後、渋滞がなければ約20分で到達できます。

 さらに、駅から徒歩3分という距離を全く感じさせないほど、閑静で緑豊かな住環境が嬉しい。古い住宅街なので特色あるスタイルの家が多く、散歩が楽しい。また都市公園も近くに豊富にあるので、子供を遊ばせるにも良い。

 でも妻が一番気に入ったのは、Summer Hill駅前の商店街です。2〜3分も歩けば終わってしまうような小さな街ですが、スタイリッシュで今風のイタリアンカフェやベーカリー、タイレストランなどが軒を並べ、道行く人々も皆リラックスして楽しそう・・・「この街は、これから絶対にメジャーになるよね!」と妻は言います。確かに現時点では全然知名度ありませんが、だからこそ穴場というか、隠れた大人の遊び場、憩いの場といった感じがします。今後、人々がこの街に注目して、近い将来AnnandaleやLeichhardtみたいな人気エリアになるポテンシャルは十分あると思いました。

 「この街に住んでみたいな・・・」という妻の声。私は、「この物件を、絶対手に入れてやる!」と決意しました。

3度目の正直:必勝オファー戦略

 折りしも、私は妻の両親への挨拶のため、シドニーを離れてケアンズに数日間滞在することになりました。そのケアンズから携帯電話を使って、2004年1月24日(月)の朝、私はこの物件にオファーを出しました。その金額、33万ドルちょうど・・・

 これ以前に出した2回のオファーがことごとく失敗したので、今度は3度目の正直、しくじることはできません。私は痛い失敗の経験を踏まえて、今回のオファー戦略を次のように考えました。

  • 低すぎるオファーは出さない。最初から売り手が納得するような「本気価格」を提示する(一度目オファーの教訓)
  • 意思決定は誰よりも早く。アクションは誰よりも素早く(二度目オファーの教訓)

 33万ドル本気価格でオファーを出した20分後、シドニーの不動産エージェントから早速電話がかかってきました。担当エージェントは年配の女性で、PRD Nationwide不動産オークションのトップセールスレディ!さすがにその話術は、超絶的にまで巧みでした。

「先ほど、33万ドルちょうどというオファーをもらったけど、それ以上出す用意があるかどうか、聞きたい。オーナーは最低33万5千ドルを希望している。その中間をとって、33万2500で手を打ちたいが、どうか?」

「もし、33万ドル以上の金額を提示する気がないのなら、その旨オーナーに伝えるが、それでいいか?」

 なかなか文字(日本語)では表現しきれないけど、とにかく巧みな話術で、値段を少しでも吊り上げようとする。もし私が値段を上げなければ、この物件を手に入れるチャンスを失ってしまうぞ、と言わんばかりの口調。私は危うく、彼女の口車に乗せられて「33万2500!」と言ってしまいそうになりましたが、そこはグッとこらえて、次のように答えました。

「今のところ、オファーは33万ちょうどだ。それ以上の額を提示するかどうかは、あと1時間以内に決断して、連絡する・・・」

 私の腹は決まっていました。この物件に33万以上の額を提示する気はさらさらない。但し、オーナーの都合にあわせて、セトルメント(物件引渡し)の日程を調整したりすることならできる。その代わり、33万ちょうどという要求を相手に呑ませたい・・・

 ところが、この内容を口頭でエージェントに伝えた場合、相手のペースにはまってついつい口車に乗せられてしまうかもしれない。私はそれが恐かった。そこで、口頭の代わりに、SMS(携帯メッセージ)を送ることにしました。

「熟考の結果、オファーの額は33万そのままとする。その代わり、もしオーナーが早めにセトルメントを行いたい場合、私はいつでもそれに応じる用意がある。セトルメントは通常、契約締結の6週間後に行われるのが通例だが、私としては3週間後でも、極端な話2週間後でも構わない。早めのセトルメントによって、オーナーは早く代金を回収することができるし、金利負担も軽減することができる」

「現時点では私のオファーとオーナーの希望額が2500ドルしか違わない。もし早めのセトルメントができれば、オーナーは2500ドル以上を節約することもできると思う。だからこの取引は、私にとってだけでなく、オーナーにとってもメリットがあるはずだ!」

 その約2時間後、不動産エージェントから電話がありました。

「今オーナーに相談した結果、33万ちょうどのオファーを受け入れるという話になった。」

「ところが、一つ条件がある。オーナーは今週金曜日までに、売買契約を締結したいと言っている。つまり、5日間のクーリングオフは一切なしだ。もしそれができるなら、33万で売買しても良い。この条件を呑むかどうか、今すぐ回答をいただきたい」

 うーむ、なかなか手ごわい交渉をしてくるエージェントさんだ。そこで私は咄嗟に、金曜日までに売買契約を締結できるかどうか、頭のなかで計算してみました。

 通常、オーストラリアで不動産を買う場合、一週間のクーリングオフ期間が認められます(注.オークションで買う場合はこの限りでない)。買い手は、この一週間のなかで、建物検査(ビルディング・インスペクション)や病害虫検査(ペスト・インスペクション)を行ったり、弁護士(ソリシター)を手配したり、住宅ローンの手続きを進めたりしながら、買うか買わないかを最終的に判断することができます。ところが、今回エージェントが言っているのは、クーリングオフ期間なしで、金曜日までに絶対買え!ということなのです。

 ところがよく考えたら、今日は月曜日の午後。金曜日までには、まだ時間的余裕があります。途中、水曜日に祝日(オーストラリアデイ)がありますが、それでも火、木、金と、まるまる3日間の時間がある。ということは、これは「3日間のクーリングオフ」と、事実上同じではないか?その間に、インスペクションやソリシターを手配して、ローンの審査を通すことは難しいけれど、頑張ればできるのではないか?・・・そう考えて、私はこの条件を呑みました。瞬時の判断でした。

シドニーにとんぼ帰り

 この電話を受けた当時、私はケアンズのショッピングセンターで買い物をしていました。時間は午後4時(シドニー時間5時)。金曜日までの契約締結という条件を呑んだ以上、ここは一刻も早く、シドニーのソリシターやビルディングインスペクションを手配しなければならない。ところが、ここはケアンズ。シドニーの電話帳なんてものはどこにも見当たらない!

 そこで苦肉の策として、シドニーにいる会社の同僚に電話してみました。彼はまだ仕事中(私は休暇中♪)でしたが、私は図々しくも、「お前、こないだ家買っただろ?その時にビルディングインスペクションをやった業者を、俺にも紹介して欲しい」、「Web電話帳で、シドニーのソリシターを3、4人調べて、電話番号を教えて欲しい」・・・みたいなことを頼みました。彼は快く協力してくれて、その結果、私はその日のうちにソリシターとインスペクション業者に電話し、アポイントメントを取ることができました。

 その後、私は翌朝一番のフライトで、単身シドニーに帰ることを決意しました。本来は木曜日の朝までケアンズに滞在する予定だったのですが、今なぜシドニーに帰らなければならないのかというと、私がソリシターやインスペクション業者と直接会わなければならないからです。またソリシターに会うにあたっては、不動産屋から売買契約書のコピーをもらって届けなければならないし、それに住宅ローンの審査もまだ終わってないから、そのコンサルタントとも会って話を進めなければならない・・・金曜日までの成約という日程を考えると、シドニーでやるべきことは山ほどあるのです。

 翌1月25日(火)、私はシドニーでやるべきことを手帳に箇条書きにして、ケアンズ早朝6:50の飛行機でシドニーに向かおうとしました。ところが、ここで一波乱が!飛行機の故障が発覚して、いつまで経っても出発しないのです。もともと25分遅れだったのが、1時間遅れになり、ついには3時間半遅れになり・・・それでも私は、空港出発ロビーで辛抱強く待ちました。ついに10:30になりました。すると、ついに無情の宣告が・・・

「誠に申し訳ありませんが、当フライトはキャンセルになりました!」

 ひどすぎる・・・3時間半も待たせた挙句、結局キャンセルかよ!私は怒りのあまり、キレそうになりました。ですが、ここでキレてもはじまらないので、12:25に出発予定の次のフライトに乗り換えるべく、私は28kgの重い荷物を持って、炎天下のなか、国内線ターミナルまでヒーコラ移動しました。結局この便は、なんとか予定通り離陸することができ、シドニーには定刻16:25に到着することができました。荷物をピックアップして、空港を出たのが結局16:55。

 それからは、時間との戦いでした。私は空港を出たその足で、Summer Hillにある不動産屋に駆けつけ、売買契約書のコピーを受け取りました。この店は17:30に閉まるのですが、17:17に到着することができたので、ギリギリセーフ!

 次は、Parramattaにある自宅にて、18:00より住宅ローンコンサルタントとの打ち合わせ。Summer Hillを出発した私は、道中Croydon近辺で渋滞に巻き込まれましたが、めげずに前進を続け、結局17:57に自宅に到着することができ、再びギリギリセーフ!

 ところが、ローン打ち合わせの途中で、頭の痛い事実が発覚!というのは、私は中国へ転職するために、現在の職場であるIBMオーストラリアを退職する旨の通告を、すでに1月20日の時点で行っていたのです!ローンの主要な借り手であるこの私が、オーストラリアの職場を退職し、豪ドルの収入がなくなる、ということ自体、お金を貸す側の銀行にとってはまさに寝耳に水!私としても、まさに不覚でした。ローンの審査が通る前に退職通告を出さなければ、こんな事態にはならなかったのに・・・

 その結果、私は通常の審査書類(所得証明、課税証明、市民税etc.)のほか、中国での収入を証明する各種書類をすべて取り揃えた上で、新たなローン審査に臨まねばならなくなりました。翌26日は祝日でしたが、そのかなりの時間が書類集めに費やされ、全然ゆっくりできませんでした。

 翌木曜日(1/27)は、早朝7:00からソリシターとの初回打ち合わせ、その後、オフィスに出勤して雑務を済ませたあと、10:30にはSummer Hillの物件でビルディング・インスペクションの結果報告。その足で空港に向かい、ケアンズから到着した妻を迎えた後、預金口座のある銀行で頭金(3万3千ドル)の小切手振り出し、その後、妻を自宅まで送り、一緒にお昼した後、再度出勤・・・あーしんど!

 その間、私の提出したローン関連書類の不備が発覚したため、再度ローンコンサルタントとアポを取り、退社後、自宅で書類揃えに奔走。終わったのが夜8:00・・・一方妻は、「つわり」のため身動きができず、結局私が夕食をつくることになる。それを食べて、片付けて、終わったのが9:30。すると、ローンコンサルタントからまた書類関連の問い合わせが・・・

 私は疲労とストレスのあまり、床に倒れこんでしまいました。そして、涙がにじみ出てきました。なんで、こんなに辛い思いをしなければならないのだ?転職に伴う会社の引継ぎ作業、住宅購入に伴う煩雑な作業、引越し準備、ケアンズからのとんぼ帰り、おまけに妻の妊娠のため家事までほとんど自分がこなしている・・・こんなの、いくらなんでも無茶だ。身体が壊れてしまう!

ついに成約!

 ついに金曜日(1/28)になりました。まさに運命の日、今日の午後までに売買契約を締結しなければなりません。まずは、朝8:00からソリシターとの打ち合わせ。その場で妻と連名で売買契約書にサインして、頭金の小切手を渡し・・・その後、妻を自宅へ送ったあと、急いでオフィスへ出勤・・・早速9:00から、会議が入っていたからです。

 この時点での懸念は、まだローン審査が完全に通っていないことと、ソリシターによるStrata Search(マンション管理組合の書類や財務状況のチェック)が終わっていなかったことです。結局、この二つは遅れに遅れ、Strata Searchの結果が私の手元に送られてきたのが、なんと午後3:30!私はそれに急いで目を通し、ゴーサインを出したのが4:00ちょうど・・・

 ところがその時点で、ローン審査の結果はまだ出来ていませんでした。ローン審査が通らないまま、契約締結なんて危険すぎる!万一ローンが却下された場合、頭金として払う3万3千ドルをドブに捨てることになるのです。「金曜日中の契約締結なんて、とても無理だ」・・・と肩を落とした瞬間、ソリシターから素晴らしいニュースが!

「先ほど、相手側のソリシターが、本日から数えて5日間のクーリングオフを認めました!」

 良かった・・・これで、万一ローンが却下されても、頭金を失わずに済むことになったのです。今から一週間もあれば、さすがにローン審査の最終結論が出るはず。そしてローン審査は、99%間違いなく通るはず。私はこの時点で、「勝利」を確信しました。ところが次の瞬間、ソリシターから驚きの言葉が・・・

「もう4時過ぎです。ソリシターは間もなく帰りますので、今日中の契約締結は無理かもしれません。今から郵送しても、相手方に届くのは月曜日になります。契約締結が成立していないため、この週末、他のバイヤーがより高いオファーを出した場合、鈴木さんがこの物件を失ってしまう可能性もあります。

 冗談じゃない・・・ここまで苦労して手続きを進めてきたのに、それが全て水の泡になってしまうなんて、絶対に嫌だ!そう思った私は、こう言いました。

「要は契約書を相手ソリシターに届ければいいんですよね?だったら私がやります!」

 配達マンを買って出た私は、オフィスを飛び出し、クルマに乗り込みました。いまの時間は午後4:15。私のミッションは、今から20分以内に、Parramattaにあるソリシター事務所に着いて契約書をピックアップすること、そして午後5:30までに、シティにある相手方ソリシターにそれを届け、契約を成立させることです。

 Parramattaで契約書の入った封筒を手にして、クルマに乗り込んだのが午後4:42。あと48分で、シティのBligh Streetにある相手方ソリシター事務所に着かなくてはならない・・・ところが、金曜日の幹線道路はどこも渋滞。シティに入るとさらに渋滞がひどくなり、5:30になっても、まだTown Hall近辺をノロノロ運転している状態・・・そこで、Bligh Streetのソリシターに電話を入れ、私が到着するまで是非待っていて欲しい旨を伝える。

 結局駐車にも手間取り、事務所に着いたのは5:50を回っていました。ですが、運命のソリシターは、私を待っていてくれていました!彼の目の前で、私は契約書に日付を入れ、サインをし、この時点でめでたく契約成立!!良かった。法的にこの物件を押さえた以上、もはや、他のバイヤーにこの物件を横取りされることもない。これで、枕を高くして寝ることができる・・・

 ついに勝った!!私は興奮のあまり、あのイヤミなやり手エージェントに電話を入れました。留守電だったので、こんなメッセージを入れました。「金曜日午後6時をもって、契約は成立しました。繰り返しますが、契約は成立しました!」。ざまあみやがれ、クソババア!

 続いて、妻にも電話を入れました。「良かった。ついに契約成立だよ!」・・・ところが、妻は「つわり」で苦しんでいたのでしょう、「ああ、そうなの・・」みたいな、気のない答えが返ってきました。ここまで散々奔走した私としては、「もっと喜んでくれてもいいじゃんか!」と、一瞬不満に思いましたが、ま、仕方ないでしょう。つわりの苦しみは我々男性には分からないものだから、できるだけ労わってあげるのが、夫の務めなのでしょう。


 以上をもちまして、「海の見える一戸建てを買うぞ!」シリーズは大団円を迎えました。いま思うと、本当に波乱に富んだ、エキサイティングな経験だったと思います。狙った物件も、Northern Beachesの一戸建てが、いつの間にかParramattaのユニットに代わり、最後の最後にSummer Hillのユニットに落ち着くという、意外な結末になりました。

 今は、自分を誉めてあげたい気持ちです。シドニーに移住して4年半。その間、不動産バブルの荒波のなかで、Parramattaのタウンハウスと、Summer Hillのユニットという2物件を仕込んだのは、我ながら上出来だと思います。もちろん、これは私一人の力では到底成し遂げられなかったことです。妻が元気に働いてくれて、給料を稼いでくれたからこそ、実現できたのです。

 私は今後も、いろんな国で不動産の勉強を続け、正しく投資を続け、最終的には自分の老後は自分で面倒みられるようになりたい。どの国の年金や福祉制度にも依存せず、いかなる国家や企業にも我が身の生殺与奪の権を握られないだけの、Financial Freedomを勝ち取っていきたい。今回シドニーで仕込んだ2物件が、その役に立ってくれることを、願ってやみません。

Summer Hillの住宅街

 

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