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シドニー日記・職業生活編第111回

海の見える一戸建てを買うぞ!−その1 (2004/9/28)


 シドニーは、海が最高に似合う都市です。シドニーを代表する風景といえば、オペラハウス、ハーバーブリッジ、或いはボンダイビーチ・・・いずれも、風景が「海」と一体化しています。もし、これらの観光名所に「海」がなかったならば、どんなに寂しく興ざめな景色になっていたことか、想像すらできません。

 また、シドニー市民のライフスタイルは、たぶん世界のどの主要都市よりも、「海」と深く強い絆で結ばれています。明るい陽光、澄み切った青空のもと、ビーチに繰り出して、そこでバーベキューを焼いたり、カフェラテを啜ったり、ボディボードに乗ったり、ビーチバレーに興じたりすることが、多くの市民にとって無上の楽しみであり、またそういう時にこそ、ラッキーシティ・シドニーに暮らす喜びを肌で感じるのです。

 せっかくシドニーに住んでいるのだから、できれば、海の見える家に住んでみたい!しかしながら、今のシドニーは400万人以上が暮らす大都市、海の見える家は特に人気が高く、賃貸で住むならともかく、購入する、特に土地付き一戸建てを買うとなると、やはり一般庶民にはちょっと手の届かない価格帯になってしまいます。不動産バブルを経験した昨今のシドニーでは、尚更そうです。

 多くの人にとっての「オーストラリアン・ドリーム」である、「オーシャンビューの一戸建て購入」・・・それを何とか実現しよう、というプロジェクトが、我が家で現在進行中です。これはもちろん、難度の非常に高いものです。オーストラリアで生まれ育ち、経済的に恵まれたオージー夫婦ですら難しいのに、移住してまだ4年余り、大した財産も持たず、英語ネイティブでもない新参者の私が、本当にそれを実現できるのか?

 いや、購入するだけなら話は簡単(でもないけど・・・)、というか、銀行がお金さえ貸してくれれば新居購入のファイナンスはできます。しかし、本当のドラマは購入後から始まります。ローン金利が6%を超える現在、月々のローン負担に耐えられるのか?それ以外にも、家の改修費用(潮風が当たる環境だと、それなりにメンテナンス費用がかさむ!)、クルマ関連コスト(ビーチエリアは鉄道が通ってないので、クルマ依存度が高くなるし、ボディも潮風で錆びる!)、市民税(ビーチエリアは税率が高い!)、加えて子供を育て、教育していく費用・・・それらを長期にわたって無理なく捻出していけるのか?そして、近所づきあい、コミュニティへの貢献を含めて、本当に心豊かなライフスタイルを、「海のみえる家」を舞台につくっていけるのか?

 できる!・・・と私は信じています。私はそのために、ここ数年、誰よりもシドニーの不動産動向について深く研究してきたと自負しています。加えて、シドニー各エリアの地域研究、豪州経済・金融動向の研究にも、力を入れてきました。いろんなケース(第一子出産、金利上昇、病気ケガ、失業など)を想定しつつ、今後5年間の我が家のファイナンシャル・プランをつくり(5年以上先のことは想定できないけど・・・)、「海の見える家」の実現可能性を、多方面から検討してきました。その結果、出た答えはこうです。

  • Northern Beaches地区、Dee Why近辺のエリアで、今年中に一戸建て住宅を買うことは十分可能。
  • 人気エリアのため、「我が家でも買える」予算の範囲では、やはり、立地や物件内容に多少の妥協が必要となる。但し、必ずしも「海の見える家」じゃなくても、「海岸まで歩いていける家」ならOK、という感じで柔軟に考えていけば、選択肢はかなり広くなる。

 今回は、なぜビーチエリアに一戸建てを買おうと思い立ったのか、その経緯を書いていきます。お楽しみに。

「海の見える家」イメージ

1.新居@パラマタの満足度

 私たち夫婦は、つい2年前、2002年7月にシドニー郊外で家を買い、同年9月に引っ越してきました(顛末記)。買ったのは、シティ(シドニーの都心)から西へ20km余り、オリンピック公園に近いパラマタ(Parramatta)にある、3部屋、2階建て、土地55坪、バスルーム2つ、車庫・カースペース付き、築2年の集合住宅(タウンハウス)です。当時は住宅ブーム(バブル)の真っ最中だったため、お値段もずいぶんかさんでしまい、39万ドル余り(約3000万円)しました。住宅ローンの利率も日本よりずっと高い(年6%台)なので、私の汗と涙の結晶(手取り給料)の半分以上がローン返済に消えるというありさま・・・

 ローンの返済のほか、家の改修、リフォーム慣れないアラブ人との近所付き合いなど、苦労は絶えませんが、それでも自分の甲斐性で初めてシドニーで家を買った!という充実感に勝るものはありません。いま振り返ると、この場所でこの家を買って、本当に良かったと思っています。満足度は非常に高いです。

 なぜそう思うのか?それは、「生活利便性と物価の安さ」、「良好な居住環境」、「外食天国・ウェスタンサバーブへの絶好のアクセス」、この三点につきます。

 (1)生活利便性と物価の安さ・・・このパラマタというところは、とにかく暮らしが便利。徒歩圏内にショッピングセンターから鉄道駅から銀行から役所から病院からオフィス街からレストラン街からホテルから劇場まで、何でも揃っている上に、クルマを飛ばせば近所に大型商業施設が星の数ほど・・・ショッピング利便性でいえば、たぶんシドニーNo.1でしょう。

 私たち夫婦は、パラマタに引っ越す前は、都心のど真ん中(シティ)に住んでいました。シティというところは、働きに出たり学んだり飲み食いするには大変便利な所で、その点、単身者や学生さんには最高なんでしょうが、反面、ファミリーがあまり住んでいないために、街を歩いても生活雑貨、家電、ホームグッズの類が本当に見当たらない。しかも、シティの道路は慢性渋滞だから、クルマを使って買い物に行くのもつらい。それに、何と言っても物価が高い!

 パラマタに越してくると、そんな悩みはほぼ解消しました。徒歩圏内で何でも揃うという点ではシティとほぼ同じなのですが、その上にここではクルマを使って、郊外型のホームセンター、アウトレットモール、家電量販店、家具ショップ、ガーデニングショップなどに繰り出して行くことができます。しかもシティと比べて、物価がかなり安い。というか、格安な商品・サービスの選択肢が非常に豊富なんですよね。例えば、「ウェアハウス」と呼ばれるホームグッズ卸売店、「レッカー」と呼ばれるクルマ解体業者(カーパーツが激安!)、ロードサイドに展開する家具直売店、個人営業の激安家電店、工業団地内にある窓ガラス、カーペット、シャッター、フローリングの直売業者などの類が、ドライブ10〜15分圏内に豊富に存在します。さらに、「ドロボウ市」みたいなものもあって、とにかく安い。

 また、家をリフォームするとか、水道管を直すとか、クルマを修理するとか、電話線やアンテナを引くとか、引越しするとか、そんな時お世話になる「専門業者」が豊富に存在し、彼らの提供するサービスの価格が概して格安なのも、パラマタ地域の特色です。特に、中国やベトナム、レバノンなどからやってきた移民業者の工賃は概して格安で、その割に腕は確かなケースが多い(もちろん当たり外れはあります)。この種のサービスって、意外とお金がかかるものなので、シドニーの他地域と比べて安く済ませられるのは嬉しいです。

 (2)良好な居住環境・・・パラマタというところは、シドニーのなかでも決してプレステージの高い住宅街ではありません。築年数の古いユニット(アパート)が多く、人口が密集しているイメージがあって、シドニーに長く住むオージーの間では、あまり評判は芳しくないようです。一般論でいえば、それは確かに事実なんですが、でもよく探せば、パラマタにもファミリー向けの良質住宅街は存在します。

 私が住んでいる、「パラマタ川北岸」、「Macarthur Street東側」エリアもその一つです。この辺はユニットがほとんどなく、一戸建てとタウンハウスだけの、閑静なファミリー向け住宅街です。特に私の住所は、「パラマタのベスト・ストリート」だと自負しています。ここは交通量の多い道路から遠く離れているおかげで、ウソみたいに静かですし(鳥の鳴き声がうるさいだけ)、パラマタ川まで歩いて2分、そこは広い緑地帯になっていて、犬を連れて散歩するお年よりやファミリーで賑わっています(時々、迷惑なアホガキが爆竹で遊んでるけど・・・)。また、南側と東側の眺望が大きく開けていて、開放感があるのも非常によろしい。

 我が家の裏庭からは、パラマタ川対岸の緑濃い住宅街が一望できます。中でもひときわ緑濃い一角は、なんとパラマタを代表する観光地、エリザベス・ファームの敷地なのです。オーストラリア最古のヨーロッパ風建造物であるこの農園邸宅(の敷地)を、裏庭に居ながらにして望める家は、シドニー広しといえども他にいくつもないでしょう(建物は森に隠れて見えないけど・・・)。

 ここパラマタ北部地域は、良い学校が数多く存在することでも知られています。ここから北へ10分ほど行ったCarlingfordには、シドニーNo.1の秀才学校James Ruse Agricultural High Schoolがありますし、その近くには、お金持ちの子弟が数多く学ぶTara SchoolKings Schoolがあります(広大な敷地内に自前のクリケットグラウンドまである、すごい・・・)。徒歩圏内にあるArthur Phillip HighやDundasのMarist Collegeも有名校ですし、Western Sydney大学のキャンパスにも歩いて10分。アメリカンスクールはじめ海外の学校も存在し、文教地区の雰囲気があります。教育の選択肢の豊富さでいえば、シドニーの他地域と比べて全く遜色なく、その意味でもファミリー向けの住地といえましょう。

 パラマタは内陸にあるため、シドニーの都心部や海岸部に比べて夏は暑く(40℃超える!)、冬は寒い(霜がおり、車のフロントガラスが結氷する!)。この「激しい気候」を少しでも過ごしやすくするため、私は「二重レンガ(ダブルブリック)の家」を選びました。今考えると、これが正解でした。夏の盛り、家に一歩入るとひんやりして気持ちいいし、冬場もそれなりに暖かい。ちょっとした鍾乳洞のようです。実はこの家を買う際、「もう少し広いけど一重レンガ(ブリックベニア)の家」か、「やや小さいけど二重レンガの家」がほぼ同価格だったので迷いましたが、居住性を考えると二重レンガにしといてよかったです。但し、造りが頑丈な分、壁に穴あけて電話線やアンテナ線を這わせるのも大変なんですけどね・・・

 (3)外食天国ウェスタンサバーブ・・・パラマタを含めた、シドニー西部郊外(ウェスタンサバーブ)というところは、とにかくメシが美味い!ここは世界中からやって来た移民がごちゃまぜに混住する地域で、彼らが本国からいろいろな食文化を持ち込んだおかげで、シドニーのどの地域よりも多彩な「食」の魅力にあふれています。しかも値段が良心的だから、素晴らしいの一言(詳しくはこちら)。

 ちなみに我が家から徒歩圏内にあるレストランの国籍をいうと・・・オーストラリア、中国、韓国、日本、ベトナム、タイ、ラオス、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インド、スリランカ、アフガニスタン、イラン、レバノン、トルコ、イタリア、スペイン、ギリシャ、フランス、英国、アイルランド、メキシコ、ブラジル・・・他にもまだあったような。

 さらに、クルマ15分圏内も含めると、これらに加えて、イラク、ソマリア、チリ、サモア、フィジー、インドネシア、カンボジア、ネパール、クロアチア、セルビア、ロシア、ウクライナ、チェコ、マルタ・・・まさに食の世界旅行。

 さらに、食べ物を通じた「人間模様」も楽しい。この地域のレストラン・食堂の多くは、英語圏以外の国からやって来た移民が細々と家族経営するものですから、同じ移民仲間として親近感が湧きますし、それだけに話もはずみます。私は、毎週のようにシドニー西部のいろんな町に繰り出して、いろんな料理を食べに行ってますが、「美味しいものを食べる喜び」の他に、「いろんな人と知り合いになる楽しみ」もあるから、やめられません。

いま住んでるところも悪くない
「ウソみたいに静か」な住宅街
裏庭から望むエリザベスファームの森

 これまでみたように、私としては、今住んでいる地域にも、住宅そのものにも、非常に満足しています。「ここが嫌だから別の土地に引っ越したい」と思ったことは一度もありません。但し一つだけ、物足りないと感じる点があります。それは、「今の家がタウンハウスである」ということです。

 タウンハウスというのは、土地付きの集合住宅です。といっても、実質は日本でいう「土地付き一戸建て」の感覚で住めますし、庭に芝生植えたりガーデニングしたり、BBQ焼いたりペットを飼ったりする位なら十分できます。ですがタウンハウスは集合住宅である以上、建物構造の大幅な改変はできません。例えば、家を建て増したり、老朽部分を建て替えたり、一階建てを二階建てにしたりはできませんし、自分の一存で外壁をペイントしたりすることもできないでしょう。基本的に、建設された当初の建物構造の範囲内で暮らさなくてはならないのが、タウンハウスを含め集合住宅の宿命なのです。

 それのどこが問題なのか・・・確かに、大人しく住む分にはいいんですけど、でも自分の家の資産価値を上げようと考えた場合、「建設当初の建物構造の範囲内で暮らさなくてはならない」ことが大きな制約条件になるからです。

 とはいえ、全く何もできないわけではありません。例えば、家の内部を総タイル張りにしたり、洗面所や台所を新しくしたり、庭に木製デッキを立ち上げてダイニングテーブルを置けるようにしたり・・・くらいのことならできます。我が家では、集合住宅で許される範囲内のリフォームはほぼ全てやってきたつもりです。家のダイニングから裏庭に直接出られるドアの取付工事、裏庭のコンクリート設置工事、階段部分と2階部分の総フローリング工事、2階で衛星放送を見るためのアンテナ工事等・・・ずいぶんお金がかかりましたが、投資した分に見合った資産価値の向上はあったと思います。

 ですが、そこまで体験してしまうと、もっと大きなフィールド(大きな土地付きの一戸建て住宅)で、もっと大きなこと(増改築、大規模な造園など)をやってみたくなるのが、人間の自然な心情というものです。私自身も、また妻も、フローリン