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シドニー日記・職業生活編第105回

日本で家を買いたい!−前編 (2004/3/10)


 最近、ウェブで日本(特に首都圏)の分譲住宅に関する情報サイトをよく見ています。日本の住宅は、外観、間取り、インテリアデザインから、分譲地の街並み計画に至るまで、ここオーストラリアのそれとは全く異なっており、良くも悪くも、「住まい方の文化」の違いに、今さらながら驚かされます。あまりの面白さについつい夜更かししてしまうことが多いです。

 また住宅価格に関しても、非常に興味深いものがあります。私の住むシドニーは、いま住宅バブルの真っ最中。住宅価格でも東京をすっかり逆転してしまった感があります。逆に東京では、'90年前後のバブル絶頂期に比べて半額から3分の1の相場になり、これから家を買う人にとっては、10年余り前には考えられないほど良い立地で、面積も広く、設備内容も良い住宅が、手頃な価格で手に入るものになりつつあります。バブル期は「遠・高・狭」と言われた首都圏のマンションや一戸建ては、今は年を追うごとに「近・安・広」になり、逆に、かつて「良質な住宅が格安で手に入る都市」として知られたシドニーは、年を追うごとに「遠・高・狭」になりつつある。住宅価格の高騰に伴い、郊外住宅地も物凄い勢いで外に向かって広がっている・・・

 私はとってもバブリーなシドニーに住んでいるので、東京の住宅広告を見るにつけ、「安いなあ」、「これってお値打ちじゃん!」などと言って驚くわけです。シドニー在住で最近里帰りした日本の友人も、みな口を揃えてそう言います。でも、心のなかでそう思っても、それを実行に移そうと考える人間はごく少ないはず。ですが私の場合、結構ハマってしまって、「このマンションを買って賃貸に出したら利回りはどうなる?」、「新鉄道が通る地域に土地付きの古い家を買って、とりあえず賃貸に出しつつ値上がりを待つのはどうだろう?」みたいなことを、日本に住む予定もないのに考えてしまいます。やっぱり、自分は一種の不動産オタクなんだと思います。

 今回の文章は、「オーストラリアに住みながら、日本に住宅を持つことを結構真剣に考えている、不動産オタクのひとりごと」です。この話は多くの読者にとって、現実離れした妄想みたいに聞こえるかもしれません。ですが、「これからの時代、リスク分散の意味でも複数の国に資産を持ちたい」と考える人にとって、或いは、「いま海外に住んでるけど、老後は日本で暮らすのもいいなあ」と思う人にとって、本書の内容が少しでも参考になれば幸いです。また、日本これから家を買おうとしている人々にとって、「日本の常識とは一味違う、外国居住者の視点から、日本での住宅取得について考えてみる」のもまた一興かと思います。

1.東京の住宅はこれだけ安い!

 つい数年前までは、「シドニーに比べて、東京の住宅は格安」なんて、誰も信じなかったでしょうが、現在はまさにそうなっています。

 2003年、シドニー都市圏の土地付き住宅(新築、中古含む)の平均価格は50万豪ドルを超えました。同地域の世帯平均収入は税込みで7万5千ドル前後ですから、平均的な一戸建ては平均年収の6.6倍するわけです。マンション(新築、中古含む)の場合、平均価格が37万ドルですから、これは平均年収の5倍になります。

 一方、同時期の首都圏の住宅価格はどうかというと、日豪両国で統計の取り方も違うし、多数の調査機関が試算を出しているので単純比較は難しいのですが、私が調べた限りでいえば、2003年の首都圏の新築マンション平均価格が約4000万円、中古で約2000万円、新築戸建の平均が約3500万円中古戸建が約2700万円、といったところ。一方、首都圏(京浜葉地区)の平均世帯収入は税込みで815万円ですから、平均的な新築戸建は年収の4.2倍、新築マンションは4.9倍、中古だと戸建で3.3倍、マンションで2.5倍となります。もちろん敷地面積や設備内容の違いはありますが、標準的なサラリーマンが標準的な住宅を購入するにあたって、いま首都圏の住宅は、シドニーに比べて明らかに「求めやすい」のは間違いありません。

 加えて首都圏の住宅は、年々価格下落で求めやすくなっている上に、どんどん「近く」、「安く」、「広く」なってきています。不動産経済研究所の調査によれば、バブル絶頂期の1990年と2002年を比べた場合、首都圏のマンション平均価格が6123万円から4003万円まで35%下落したにもかかわらず、占有面積は65.57m2 から78.04m2と19%の拡大、東京駅からの時間距離も39.9分から31.9分へ、20%の短縮。つまり首都圏の住宅は、10年前よりも安価になった上に、立地条件や設備内容も向上しているといえましょう。

 但し、これらは手放しで喜べるものでもありません。例えば、1990年時点では日本全国ほぼ完全雇用の状態でしたが、現在では不安定な雇用に甘んじている人や失業者も多く、そういう人たちは住宅がいくら安くなっても買えません。またここ10年以上、資産価格がずっと下落し続けたため、彼らの多くは住宅の買い替えをせず(売り買いしたら損になる!)、一度買った新築マンションや新築一戸建てに、ずっと住み続けようとします。でも、果たしてそれが幸せな状態でしょうか?確かに、住宅価格は安くなり、多少面積も広くなって都心にも近くなったのかもしれないけど、でも人間、ライフステージの変化に応じて住まう環境を換えるのが本来あるべき姿ですよね。資産デフレのためにその自由もない状態というのは、やはり不幸なことだと思います。

 一方オーストラリアの場合、ここ10年近く、かなり速いペースで住宅の資産価値が上昇し続けましたから、無理して高い家を買っても、その価値は上昇します。だから買い替えの際にお金も借りやすいし、また買い換えた不動産の価値も上がると期待できるから、例えば子供が大きくなって広い家が欲しくなったとか、年老いて小さいマンションに引っ越したくなった時に、みんな気軽に家を買い換えます。人々にそういう選択の余地があるのは、確かに幸せなことです。但しこれは、以前、まだ安かった時代に家を買った人だけに言えることです。現在では相場があまりに高くなりすぎて、多くの若い世代にとって、シドニーに持ち家なんて夢のまた夢になっているのが現状です。

2.インフレの予感

 不動産というのは、少なくとも数千万円単位の大きな買い物です。それを買うタイミングによっては、数千万円単位の値上がり益を手にすることもあれば、一生取り返しのつかないような大損をすることもあります。では、どういうタイミングで買えばいいのか?それを考える材料の一つとして、「インフレとデフレのサイクル論」が参考になります。インフレとは、物価が上がる経済状態のこと、デフレはその逆に、物価がどんどん下落していく状態のことを指します。

 ここ10年、日本はずっと不景気で資産デフレで悲観ムードが席巻しています。一方オーストラリアはずっと好景気が続き、「経済黄金時代」、「バブル」とまで言われています。今のところ全く対照的な両国ですが、それでは、今後の10年、20年と、そのトレンドがずっと続くでしょうか?

 不動産というものは、ローン返済期間だけで通常20〜30年、建物は50〜60年、モノによっては100年を超える生命を持つ、「長寿商品」です。そういう長いスパンで見た場合、いまシドニーで高い不動産を買うのと、東京や大阪で割安の不動産を買うのとでは、どちらが「トクをする」確率が高いでしょうか?或いは、日本のバブル絶頂期に高い不動産を買って、その後のバブル崩壊で悲惨な目にあった人は大勢いますが、今シドニーで高い不動産を買うのと、東京や大阪で安い不動産を買うのとでは、どちらが「将来ババを引く」可能性が高いでしょうか?

 もちろん、そんな将来のことは、私を含めて誰にも分かりません。ですがどんな国でも、標準的な不動産の寿命である50〜60年の間、ずっとインフレが続くとか、あるいはデフレが続くことは、普通考えてありえない。その間に、デフレの世も来れば、インフレの世も来る。より直裁に言えば、デフレの世の後には、必ずインフレの世がやってくる。たった一つの不動産を保有している間に、デフレとインフレ(或いは、不況と好況)の波が何度か繰り返される・・・

 そこに、ここ10数年ずっと資産デフレ状態だった日本の不動産に注目する理由があるのです。今みたいなデフレの世では、不動産を持っていても価値は下落するわ、賃貸に出しても儲からないわ、もしローンがあれば年2〜3%の金利を払い続けなくちゃならないわで、踏んだり蹴ったりです。いや不動産だけではなく、株もダメ、預金金利も実質ゼロ・・・こんな状況では、資産を現金で持つか、せいぜい国債、社債を買うか、或いは住宅ローンの繰上げ返済をするのが一番得策でしょう。でも、もし日本が今後何かのきっかけでいきなりインフレの世になったらどうなるか?資産を現金で持ったら目減りする、長期国債なんか買った日には、目減りに何年も耐えなければならない。特に年金収入に頼らざるを得ない老人は辛い目に遭うでしょう。一方で、不動産という「現物」を持っている人の立場は俄然強くなる。面白いように資産価値が上がるし、賃貸料だってどんどん吊り上げることができる。同様に、株価も上がるから、デフレの安い時代に安い株を買っていた人が儲かる・・・

 洋の東西を問わず、人は一旦「これは儲かる!」と思えば、争ってそれに飛びつくものです。その点、アメリカ人だってオーストラリア人だって、中国人だって、何ら日本人と変わらない。株や不動産にみんなが飛びついた結果、その価格は一気にドーンと上がる。そのトレンドに早く気づいた人ほど儲かり、アクションの遅かった人ほど、「ババを引く」。そして洋の東西を問わず、どんな投資商品でも、少数の人が儲かり、多数の人が損をするようにできている。その結果どの国にも、少数の富裕層と、多数の庶民(貧困層、良くて中間層)が存在する。

 ひるがえって、日本の現状を見るとどうか?昨年後半から経済が多少好転してきたとはいえ、それは大企業、輸出、設備投資中心の回復であって、個人の家計はまだ潤っていません。マクロで見てもデフレ状況を脱してはいないし、全国の多くの地点で地価は未だ下げ止まらず、失業率も高止まり・・・そんなこんなで、世の中はまだ「デフレだ」、「不景気」だとやっている。でも現在を、「デフレからインフレの世に転換する一歩手前の地点」、「不動産投資のチャンス」と捉えることはできないだろうか?

 面白いデータがあります。2003年の実質経済成長率(=物価変動の影響を除いて計算した経済成長率)。オーストラリアは、さすがに年率4.0%と、先進国トップクラスの数字をマークしました。先進国第一位は米国で4.3%、途上国も入れると、最高が中国の9.9%、次いでインド8.4%。で、日本の成長率はというと、何と3.6%!意外にも、これは「黄金時代」にあるオーストラリアと比べても遜色ない数字なのです。他の先進国はというと、韓国が2.3%、英国が2.0%、カナダとユーロ圏に至っては、1%に満たない数字・・・昨年の日本経済は、先進国のなかでは上位に入る健闘ぶりだったのです。

 もちろん、これらは速報値ですから、今後多少の変動はあるとは思いますが、それにしても、3.6%成長というのは日本に住む多くの人にとって、「生活実感と随分かけ離れている」ことでしょう。それもそのはず、実質ではなく名目成長率(=物価変動を含めて計算した経済成長率)でみれば、物価下落の影響もあって年率1%台後半に留まるでしょう。そして生活実感というのは名目成長率に近いですから、多くの国民にとっては、「1%台しか成長したように思えない」ことになりますし、マスコミもそんな国民感情に従って報道するでしょう。でもその裏で、数字だけ見れば日本経済は力強く回復しているようです。

 2004年は、今のところ、日本経済にとって明るい材料が多く、順当にいけば回復の方向に向かう可能性が高いでしょう。もちろん、まだまだ楽観はできませんが、仮に回復ムードのなかで、多くの人が「今度の景気回復はどうやら本物だ!」、「10年以上我々を苦しませてきた不景気から、今度こそ脱出できるかもしれない」という気になったらどうなるか?個人消費に火がついたらどうなるか?これまで10年以上、抑えつけられていた日本人の消費欲求が爆発したらどうなるか?ここ10年間、冷や飯ばかり食わされてきた人々が、「これはチャンス!」ということで、死に物狂いで頑張り出したらどうなるか?

 この「景気回復シナリオ」でいった場合、高い経済成長率→所得環境の改善→失業率の低下→個人消費の増加→物価の上昇(デフレ脱却、インフレ突入)、という経済拡大サイクルに入る可能性が高い。そんな世の中になれば、人々の目が株式市場や不動産市場に向かい、それらの価格が上昇するでしょう。特に日本の場合、これまで不景気の時代が長く、抑えつけられていたエネルギーが巨大でしたから、一旦それが爆発すれば、「かなり激しい動き」になる可能性が高いと思います。

 或いは、内外の諸要因によって経済回復がうまくいかず、景気が腰折れして再び不景気に向かう、という可能性もあります。ですがその場合でも、「景気回復なきインフレ」になる可能性が少なからずあると思います。その背景に、国・地方合わせて700兆円に及ぶ債務の返済問題があります。日本国は、この膨大な借金をどうやって返すのか?もちろん、経済が回復してくれるに越したことはないのですが、それができない場合、「人為的にインフレをつくり出す」という手に出てくる可能性があります。インフレになれば、例えばの話、に物価が今の2倍になれば、700兆円の債務が実質的に350兆円になる・・・日本国は一銭も使わずに、債務を半減することができるわけです。また物価が2倍になれば名目の賃金も法人所得も2倍になりますから、より多くの所得税や法人税を徴収することができる・・・いま日銀が物凄い勢いで日本円を刷ってるのも、御用学者に「インフレターゲット」とか盛んに言わせているのも、財務省を中心に、そうした思惑があるからなのでしょう。

 この目論見がうまくいった場合、犠牲になるのは他ならぬ日本国民です。例えば、国を信じて日本の国債を買った人は、インフレによってその価値が目減りして、痛い目に遭います。資産の大部分を預金で持っている国民も、年金を現金でもらっているお年寄りも、目減りに苦しめられます。所得税を多く納めるサラリーマンも同様・・・これは、言い方によっては、「日本国民を犠牲にして日本国を助ける」悪魔のシナリオともいえましょう。逆にそうなった場合、資産を現物で持っている人は強い。株を持っていれば値上がりのチャンスが大きいし、賃貸に出せる不動産があればさらに有利になる。

 私は、「インフレの世は近い」とみています。これからの日本は、経済が回復してもしなくても、インフレの方向に向かう可能性が高い。だから私はインフレに備えて、日本における資産を、不動産や株券など、インフレ対応型のものにしていく必要があると考えています(というか、すでにインフレ対応型になっています。事情は後で詳しく話しますが・・・)。その一環として、日本の不動産にいま注目しているのです。

 もちろん、まだデフレ状況のなかにいる日本の人々に、「これから、インフレの世になる可能性が高い」と言っても、信じてもらえないかもしれません。そりゃそうでしょう。ある状況の中に身を置いていると、その状況が変わった時のことなどイメージすらできないのが、人間の悲しい性・・・例えば、いまバブルの状況にあるオーストラリアの人々は、今後バブルが弾けて大損失を蒙る日のことなど想像だにせず、億単位の高額不動産をバンバン買っているわけです。

 ただ、これだけは言っておきたいのですが、自分の頭で考えることをせず、世の中の風潮に合わせて、いつまでも「不景気だ」「デフレだ」などと言ってる人間ほど、損をする確率が高いと思います。私のみるところ、日本にはすでに「好景気」あるいは「インフレ」に転ずる萌芽が見えているのに、いつまでも「不景気」「デフレ」モードから意識が抜け出せないでいると時機を逸するし、世の中が「好景気」「インフレ」モードになってから行動を起こしてももう遅い。実際そういう人ほど、「好景気」「インフレ」のピークが過ぎてから株や不動産に手を出して、結局大損することになるのです。逆に、世の中の動きに少し先んじて行動を起こした人ほど、資産を増やせるチャンスが大きいのです。

 今はすでに、マスコミや政府、、銀行や証券会社の言うこと、一般常識や社会通念を鵜呑みにせず、自分の頭で考え、行動できる人間だけが、自分の資産を守り、殖やすことができる時代だと思います。私は、そういう連中の言いなりになって損をして、挙句に恨み節を吐くよりも、世の中の動きを先取りして、儲ける人間でありたい。たとえ儲からなくても、自分の頭で考え抜き、最高の判断をした挙句の失敗なのだから仕方ないのだと、納得する人間でありたいと思います。

3.不動産は面白い

 先ほど、インフレの世に強い投資商品として、「不動産」と「株式」を挙げました。この2つのうち、「手軽に売買できる」のは明らかに株式の方です。特に私のような海外居住者にとって、株式の方が圧倒的に手を出しやすい。逆に不動産は圧倒的に難しい・・・第一、我々は日本国内での定収入がありませんから、住宅ローンが組めません。物件を買うだけのキャッシュがあればいいですが、そうでない場合、新規取得は非常に難しい。

 また、「取引コスト」の問題もあります。例えば日本でマンションを買って賃貸に出したとして、入出金の管理(賃料、ローン返済、管理費、修繕積立金、固定資産税)に始まり、入居者の募集とか、リフォームとか、それらもろもろの「面倒臭いこと」を、全て自分の責任で、しかも日豪間の遠隔操作でやらなければなりません。もちろん、本人が日本にいない以上、信頼できる管理会社にお願いすることになるわけですが、それにしたって、「いくらで貸すか?」、「リフォームはどうするか?」等について、密接にコンタクトを取りながらすすめる必要があります。要は、いろんな手間がかかるわけです。

 もっとも最近では、日本でもREIT(不動産投資信託証券)といって、株式投資信託と同じような手軽さで売買できる商品が普及してきましたし、これなら我々海外在住者も、比較的容易に手が出せそうです。ですが私は、「実際に不動産を買ってオーナーになって、それを賃貸に出して、住みたくなったら自分が住む・・・」という、昔ながらのやり方に強く惹かれます。もちろんこれは私個人の趣味というか価値観であり、誰にも当てはまるものではないことは分かっています。

 不動産ほど、面白いものはないと思う・・・不動産は、投資収益が上がるとか節税効果があるとか、そうした損得のレベルをはるかに超えて、「住まう」という人間の基本欲求を満たすものです。憧れのライフスタイルを実現するとか、家族団欒の舞台になるとか、そうした「人間の幸福感」の母胎になるものです。「人間の幸せに直結する、世界で唯一の投資対象」、それが不動産なのかもしれません。

 私の偏見かもしれませんが、その他の投資対象、例えば株式や債券、投資信託や外国通貨などにしても、それをやることによって、「お金を儲ける」「資産価値を殖やす」以上の幸福感、満足感はなかなか得られないものだと思います。もちろん、投資の成果に一喜一憂している過程はゲームみたいで面白いし、またある会社の株主にもなれば、株主優待券で安く旅行に行けたり、商品券などももらえるのかもしれません。ですがその満足感・幸福感は、不動産のそれには到底及ばないでしょう。

 不動産の場合、例えば、パリでもフィレンツェでも、ニューヨークでも横浜山手でもいい、ずっと憧れていた土地に不動産を買い、オーナーになる。するとそれだけで、その土地の住民になった気分になれるものです。そこに住んで、朝起きて散歩すると、大好きな街並みが目の前に広がっている、お気に入りの店をいくつか見つけて、ご近所とも仲良くなる。もし好きな人と一緒に暮らせるのなら、その街を舞台に、楽しい思い出をたくさんつくれる・・・そうしたレベルの満足感、幸福感は、他の投資対象では得られないものです。私は、不動産のそうした、「投資収益プラスアルファ」というところ、特に「プラスアルファ」の部分が好きなのです。

 また不動産の面白い(難しい)ところは、「おカネで割り切れない部分が大きい」ことです。不動産以外の投資対象、例えば株式の場合、ほとんどの人は収益目当てで買いますし、また民間企業も基本的には利潤の追求をしてますので、基本的におカネの世界で自己完結しているといって良い。ところが不動産の場合はそうではありません。多くの人は、家族で長年住むために家を買いますし、また立地にしても、「一番儲かりそうな所に買う」わけではなく、普通は職場や実家の近く、鉄道駅やショッピングセンターの近く、学校がある所、住環境や治安の良いところ、みたいな基準で場所選びをします。というか、第一義的に「暮らす」ためのものであり、「資産」としての部分は二の次、という性質を持っているのが不動産だと思います。

 私は、不動産のこうした「お金で割り切れない」「プラスアルファ」の部分が好きで、最高に楽しいと思っている人間です。それだけに実は不動産投資には向かない人間なのかもしれません。「投資」「ビジネス」とドライに割り切ることができず、「自分が住んだらどうだろうなあ」、「大好きなこの街で家を買いたいなあ」というふうに、どうしても趣味に走ってしまうのです。というより、100%「ビジネス」とドライに割り切るような不動産投資なんか、面白味がなくてやってられないと思っている人間です。

 でも、だからといって、投資収益の面も無視できるものではありません。少なくとも何千万円する大きな買い物ですから、いくら趣味に走ったとしてもそんなに損をしたくない。例えば、資産価値が何千万値下がりしても、「ここに一生住むんだから値下がりも関係ない」なんて言いたくない。いくら不動産の「暮らしの面」が趣味でも、ある程度はおカネの面でもシビアでありたい。言い換えれば、「趣味」と「投資収益」とのバランスをとりたいと思っています。

長くなりましたので、今回はここまで。次回(後編)では実践編というか、私がこれから日本で不動産を買うにあたって、何が大事だと考えているか、私の(結構痛い?)経験も含めてお話ししたいと思います。

後編に続く
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