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「シドニーの住宅バブルは破裂寸前!」、「果たしていつ弾けるか?」・・・昨年後半以降、こんな見出しを新聞で本当によく見るようになりました。TVの時事番組でも、このトピックを扱うものがかなり増えたように思います。
シドニーに暮らす我々にとって、地価・不動産価格の高騰は、もはや「暴走列車に歯止めがきかなくなった状態」と言ってよいでしょう。思い起こせば、3年以上前のシドニーオリンピックの頃から、毎年のように、「不動産価格はもうすぐ落ち着く」、「来年こそは価格上昇率が鈍化する」と言われ続けていました。ところが蓋を開けてみれば、予想を裏切るハイペース(年率10〜20%)で相場は上がり続け、ついにシドニー都市圏の土地付き住宅の平均価格は50万豪ドルの大台を超え、今や財務大臣やIMF(国際通貨基金)でさえ、「このままいくと住宅バブルが破裂するぞ!」と、警告する事態に(2003年9月)・・・
不動産高騰がシドニーやメルボルンなど大都市部で一層進み、それが全豪各地に波及する流れの中で、政策の焦点も変わってきました。つい数年前までは、「低所得層がシドニーやメルボルンで住宅を買えるようにするには、どうすればいいか?」という課題が中心でしたが、昨年の後半からは、「住宅バブルの破裂がオーストラリア経済を失速させないよう、軟着陸(ソフトランディング)させるにはどうしたらいいか?」が焦点になってきています。
今のところ、軟着陸のために豪州政府が使っている政策は「利上げ」・・・すなわち利子が上がるとローンの返済が増えるから住宅を買い控える人が増え、その結果不動産価格は落ち着く、というのが政府の狙いです。豪州連邦銀行の政策金利は昨年9月から2度、それぞれ0.25%づつ上がりましたが、このように少しづつ利子を上げることによって、住宅価格をまず高止まりさせて、それから徐々に下げる方向に誘導していく、というのが政府のシナリオだろうと思います。今のところ、利上げ政策は機能しているようで、シドニーに関しては、まだ「高止まり」までは行きませんが「緩やかな上昇」までには落ち着いてきています。今後の動向がどうなるか、目が離せません。
その前にまず、今シドニーの不動産価格がどのくらい高いのか、一通り見ていきましょう。この問題については、シドニー日記でも何度か採り上げましたが(25号、59号、89号、90号、番外編)、それらを書いた当時よりも不動産価格はさらに大幅に上がりましたので、再度アップデートしますね。
1.高位価格エリア−Eastern Suburbs
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Kensington |
Kingsford |
Randwick
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| 中央値 |
$1,150,000 |
$831,000 |
$1,015,000 |
| 年間上昇率 |
+11% |
+9% |
+12% |
| 都心から |
南東6km |
南東7km |
南東6km |
(注)中央値は、2003年1月末~2004年1月末に各地区で売買された土地付き住宅のうち、価格の高い順から順に並べ、真中の物件の価格を表したもの。上昇率は同期間を通じての中央値の変化。
シドニーの中心部から近く(5~8km)、海にも近いEastern Suburbsは人気が高く、主に高所得層の住地となっています。表にみるように、この地区の物件価格はだいたい100万ドル(8300万円)が相場、今シドニーの世帯平均収入が年7万5000ドル前後ですから、物件価格はその約13倍!不動産の購入は年収の5~6倍が限界と言われていますから、この地区に一般庶民が土地付きの家を買うのはほとんど無理です。買えるとすれば余程の高所得者か、すでに不動産を持っている人が、それを担保にして新たにローンを組む「買い換え族」くらいでしょう。
この地区の地価高騰に関しては、地元Kensingtonに住むオージー夫婦が面白い文章を書いてますので、紹介しますね。
〜私と妻は、水曜日の夜食時に、Southern Courierというコミュニティ誌によく目を通すのですが、その紙面の約半分は不動産広告で埋め尽くされています。何よりも驚くべきはその価格。Million(100万)がいくつ出てくることか・・・信じられません。一体誰がこんな高額の家を買えるんでしょう?
仮にKensingtonに3部屋の家を買おうとすると、80万ドルはするでしょう。もし仮に、20万ドル(プラス税金、諸費用)の頭金を用意して、60万ドルのローンを組んだとして、現在のローン利子6.57%/年で計算すると、25年ローンを組んでも月々の返済は4,077.53ドルになります。そうすると、年70,500ドルというかなり高額のサラリーを貰える職に就き、ローン返済のほか飲まず食わずで一銭も使わず、それで初めて返済できることになるのです。今後25年の間、そんなペイの良い仕事に就いていられるという保障がどこにあるのでしょう?
つまり、これからシドニーで家を買うには、「夫婦共働き」というのが絶対条件になるのです。夫婦が一日中仕事に明け暮れ、生活に追われ、子供たちには愛情を十分注げないことになるのです。子供たちは、私たちの世代が親から受けたのと同程度の愛情を受けられないまま、大きくなっていくのです〜
なお、作者をこれを書いた時点(2003年8月)に比べて、Kensington地区の不動産価格はさらに上がり、政策金利も0.5%上がりましたので、月々の返済額はさらに大きなものとなります。なお、Eastern
Suburbsと同様、都心近くの人気住宅地であるLower North Shore(Crows Nest、Artarmon、Lane
Coveなど)でも似たような現象が起こっています。よりグレードの高い高級住宅地、Belleview Hill、Double Bay、Kirribilliあたりになると、まさに「選ばれた者だけが住めるエリア」という感じになってきます。
2.中位価格エリア−Middle Ring Suburbs
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Hornsby |
North Parramatta |
Peakhurst |
| 中央値 |
$535,500 |
$547,500 |
$550,000 |
| 年間上昇率 |
+11% |
+14% |
+17% |
| 都心から |
北26km |
北西25km |
南21km |
シドニー都心部から20〜25kmほど離れますが、ちょっと頑張ればサラリーマン家庭が土地付き住宅を買えるのがこのエリアです。いずれも典型的な郊外住宅地で、物件の相場は50万ドル強(4150万円強)。私もこのエリア(North
Parramatta)に家を買って住んでいます。
とはいえ、決して安くはありません。この3地区の相場は、すでにシドニーの平均世帯収入の7倍以上で、「限界」といわれる「年収5〜6倍」のラインを超えています。つまり、初めて住宅を買う人にとって、平均的な収入ではすでに手が出ない領域になりつつあるのです。年収トップ25%に入る家庭の初回購入か、或いは「買い替え族」にとっての典型的な住地といえましょう。
参考までに、仮にいまNorth Parramattaで平均価格ちょうど($547,500)の家を買い、2割の頭金+諸経費($12〜13万)を用意して8割($438,000)の25年ローンを組んだとすると、月々の返済額は$3,046になります。つまり、1日あたり約$100。ホテルにも泊まれるような金額を、一日も欠かさず、25年間払い続けることになるのです。
3.低位価格エリア−Outer Ring Suburbs
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Gosford |
St Marys |
Campbelltown |
| 中央値 |
$335,000 |
$285,149 |
$286,125 |
| 年間上昇率 |
+21% |
+18% |
+19% |
| 都心から |
北74km |
西45km |
南西52km |
このエリアはシドニー都心から非常に遠く、距離にして50km、或いはそれ以上離れていますが、現在、一般庶民や若い夫婦でも家が買えるエリアとして、人気を集めています。現在、シドニー都市圏で最も住宅開発が盛んに行われ、住宅価格の年間上昇率が一番大きいのもこのエリアです。
具体的なイメージとしては、夫29歳機械エンジニア、妻26歳小学校教諭、世帯年収6万5千ドル・・・みたいな平均的なオージー若夫婦が、こうしたエリアに家を買います。但しもし勤め先がシドニー都心部にある場合、片道1〜2時間の長距離通勤を強いられます。彼らに子供ができた時、その送り迎えのために夫婦のいずれかが住まいの近くに職場を見つけなければならないなど、生活上の制約も多いといえましょう。
さて、読者の皆さんには、「いまシドニーに家を買って住むのがいかに大変か」ということが、分かっていただけたと思います。そう、まじで大変なんですよ〜。10年前に移住して、まだ家が安かった時代にビーチ沿いの一軒家でも買っておけばよかったと、後悔するも後の祭り(泣)・・・でも気を取り直して、次はシドニーの不動産価格がなぜここまで上がったのかについて考えてみます。
Peter Waxman著、Investing
in Residential Propertyという本は、私がオーストラリアの不動産市場について考える際の、バイブルみたいにしている本ですが、そこではシドニーの不動産ブームを引き起こした15の要因が挙げられています。私も、彼の説に賛同する一人です。
- 過去31年間で最低の金利水準により、ローン利子負担が減少した
- 金融機関の自由競争により、住宅ローン商品選択の幅が広がった
- 上に加え、投資用ローン商品が多く出回り、不動産投資がしやすくなった
- 2001年に導入されたFirst Home Buyer Grant(住宅初回取得者に対する補助金)により、特にシドニー西部郊外での住宅需要が喚起された
- 不動産市場の長期的サイクルでいうと、90年代中盤以降は、シドニー都心近くのエリアにおいてちょうど住宅供給が希少となる時期にあたり、そのため当エリアの住宅価格が上昇した。今回はそれがより遠い郊外にも波及して、シドニー都市圏全体の住宅ブームにつながった
- シドニー圏における失業率の低下。特に富裕なエリアでは完全雇用に近い状態となり、実質所得水準の上昇が不動産取得熱につながった
- 10年の長きにわたる好景気によって、シドニー住民の多くが「不動産価格は下がらない」という「土地神話」を信じるに至った
- 人口変動の要因も見逃せない。シドニーでは出生率の低下、高齢化、他州への人口移動が起こる反面、オーストラリアに移住してくる人口の約4割がシドニーに流入しており、彼らが住宅需要を喚起した
- 道路・鉄道インフラの整備により、不動産価格が上昇したエリアが多くみられる
- 経済のグローバル化のなかで、オーストラリアにおけるシドニーの拠点性が高まり、就業機会が増えた
- 香港、韓国、米国、英国をはじめ、海外からの住宅投資が増えた。これらの国に比べ、豪ドルの相対的な安さシドニーの不動産の相対的な安さが、投資家にとって魅力となっている
- 住宅建設資材価格や労賃の上昇が、住宅価格を押し上げた
- シドニー都市圏で土地が希少となり、地価が上昇した
- ベビーブーマー世代のライフスタイルの変化。都心近くでカフェ付き、ジム付き、テニスコート付きのマンション暮らしを好む層が増え、マンション建設の需要が喚起された
- 他の先進国に比べ、オーストラリア経済が相対的に好調だったことが、消費者意識を好転させた
しかし、良い時代はいつまでも続くとは限りません。次は、ここまで上がったシドニーの不動産価格が今後5年くらいの間にどう推移していくのかについて、私見を述べたいと思います。
まず可能性としては、次の4つのシナリオが考えられると思います。
- シナリオ1(引き続き急上昇):今後も引き続き、不動産価格が年率10〜20%の割合で上昇する
- シナリオ2(高止まり):間もなく価格が高止まり、下がりも上がりもしない
- シナリオ3(緩やかに下落):現在のレベルから5年くらいかけて、20%程度下落し、その後下げ止まる
- シナリオ4(一気に暴落):日本のバブル崩壊のように、不動産価格が暴落し、金融市場が混乱して経済が長期不況に陥る
次に、各シナリオの詳細と実現可能性について、思うところを述べます。
シナリオ1(引き続き急上昇):実現可能性5%
このシナリオは、政府の利上げ政策にも関わらずシドニー圏の不動産価格上昇がどうにも止まらず、現在と同じ年率10〜20%で上昇し続けるという想定です。例えば、世界経済のなかでオーストラリアが「一人勝ち」することによって、世界の投資資金がオーストラリアに流れ込み、その結果豪ドルが上昇(1豪ドル=1米ドル程度に)、政策金利も上昇(年率10%程度に)、それらがもたらすインフレ圧力は安い輸入製品の大量流入や企業のリストラ努力によって相殺される、みたいな「豪州版ニューエコノミー」の状況になれば、その流れのなかで不動産価格が急上昇し続ける、という可能性が出てくるでしょう。
しかしながら、その実現可能性は非常に低いと思います。いまオーストラリアの政府は、明らかに住宅バブルの沈静化を志向しており、住宅価格が下げ止まらなければ政策金利を上げるというスタンスをとっているからです。また、いま国民が負っている負債額の膨大さからしても、これ以上有利子の借金を重ねてまで、バカみたいに高い不動産にお金が流れ込み続けるとは思いません。また賃貸相場は1年以上前から明らかに下落しており、シドニーで不動産投資をするメリットは年々少なくなってきています。実際、このシナリオを予言するエコノミストはほとんどいないでしょう。
あと、これはシドニーに暮らす者の生活実感なのですが、これ以上、年率10%を超える勢いで不動産価格が3年も5年も上がり続けると、都市シドニーは滅茶苦茶になるでしょう。「大金持ちじゃないと市内近くに住めない」、「一般庶民は50km圏内に家を買えない」、「市内近くの空き地はことごとく地上げに遭い、そこに粗製濫造のマンションが建ち並び、100万ドル単位の額で売られる」みたいな、文字通り「人間が住めない街」になってしまうでしょう。オーストラリア人が「まとも」であれば、それが政治的に受け入れられるはずはないと思います)。
もう一ついうと、この急上昇シナリオは、間違いなくシナリオ4(一気に暴落)に直結するでしょう。相場が上がれば上がった分、バブルが膨らめば膨らんだ分、それが弾けた時のダメージが大きくなります。
シナリオ2(高止まり):実現可能性25%
このシナリオは、政府の利上げ政策が一定の効を奏して、シドニー圏の不動産価格が現在のレベルか、或いはもう少し上がったレベルで上げ止まり、その後は高値安定し、上がりも下がりもしない、という想定です。新聞や雑誌の記事を読む限り、オーストラリア人エコノミストのなかで、このシナリオを予想する人が一番多いように思います。
彼らの予想するところはこんな感じです・・・シドニー圏全体として見れば、あと1年程度で不動産価格は高止まる。但し、どのエリアも一様に高止まるというわけではなく、場所や物件によってはさらに上昇するところもあれば、逆に下落するところもある。例えば、都心近くで環境の良い住宅地とか、特色のある建物や、広い土地のある物件は上昇し、逆に都心から遠く、利便性も特色もないエリアの物件価格は下落する。それでシドニー全体としてみれば、上げ幅と下げ幅がほぼ均衡し、高値安定する・・・
私の意見では、このシナリオはやや楽観的に過ぎると思います。高止まりシナリオを支持するエコノミストは、オーストラリア人の所得が今後も安定して増え続けることを前提に考えているようですが、国際経済の現状を見る限り、そこまで楽観はできないと思います。その第一の理由が、豪ドル高や長年にわたる国内物価の上昇により、オーストラリアで経済活動をするコストが他の先進国と比較しても決して安くなくなってしまったことです。特に豪ドルは、ここ1年余りの間に米ドルに比べて50%以上も値を上げました。つまり、この国の労賃やオペレーションコストが米ドル換算で一気に5割も高くなったのです。
グローバル経済のなかでオーストラリアが高コスト国になってしまえば、他の低コスト国(インド、東南アジア、中国等)との価格競争のなかで、オーストラリア人労働者には賃金の引き下げ圧力が働きます。私は米系多国籍企業でIT技術者として働き、ここ数年でオーストラリア人の仕事がずいぶんインドやマレーシアに奪い取られていったのを見ていますから、その構図がよく分かります。
現在では、日本からの移住者の間でさえ、「シドニーの物価は、日本と比べても高い」と言う人がずいぶん多いし、またアメリカ人の同僚も、皆シドニーの物価の高さに舌を巻いている状況です。デフレとまではいかなくても、国際的にみて高すぎる物価には下方圧力が働く。そんな状況の中で、シドニーで働く者のサラリーが今後も順調に上がり続けると考えるのは楽観的に過ぎましょう。当面は横ばいか、せいぜい低いレベルの上昇に留まると思われ、そんな所得環境では、仮に住宅価格が現在のレベルで高止まりしても、多くの人にとっては高すぎる、ということになるでしょう。
シナリオ3(緩やかに下落):実現可能性60%
このシナリオは、政府の利上げ政策が効を奏して、シドニーの不動産価格がまず高止まりした後、しばらくしたら緩やかに下落する。数年にわたり、ダラダラと下落した後、20%程度下がった時点で下げ止まる。その後はその値段で安定するか、緩やかに上昇する、という想定です。私は、このシナリオが一番実現可能性が高いと考えます。
このシナリオのポイントは、「現在のレベルから約20%の下落」を想定していることです。現在のシドニーの不動産価格は、可処分所得や予想投資収益jなどから割り出された「適正水準」からみて約20%高いというのが、専門家の一致する意見です。今後当面、シドニーで働く者のサラリーがさほど増えないと仮定すれば、20%余分に高い価格は、徐々に調整されて、適正水準に近づいていくものと思われます。
なお、20%の下落というのは、シドニー圏全体を平均した下落幅がその程度になる、という意味です。場所によっては現在のレベルからほとんど下落しない所もあれば、別の場所では40〜50%下落するところも出てくるでしょう。地価下落のなかで、場所や物件に関して厳しい選別が働き、利便性が悪い、治安が悪い、教育環境が悪い、住宅地としての魅力がない、建物に特色がないといった、悪条件の重なるところでは大きく下落し、逆に「選ばれた所」のみが下落をまぬかれ、上昇さえする、という感じになっていくでしょう。
なお、このシナリオになれば、オーストラリア経済は数年間、減速するでしょう。少なくとも、「不動産価格は上がり続ける」という「土地神話」が崩れることによって、消費意欲が減退するでしょう。ビジネスマインドも低下し、リストラも増え、失業率も上がるでしょう。ですがこの程度の下落で収まれば、金融システムが総崩れになるところまでは行かず、逆に高コスト体質も是正されて経済体質が強化され、多くの人にとってシドニーの住宅地が手に入るものになる・・・という意味で、「多少の痛み」は伴っても多くの人にとって一番望ましいシナリオなのかもしれません。
シナリオ4(一気に下落):実現可能性10%
このシナリオは、政府の利上げ政策が失敗し(効を奏しすぎて)、シドニーの不動産価格が一気に暴落し、その結果ビッグ4をはじめとする国内金融機関が膨大な不良債権を抱え、同時に株価も暴落し、その結果民間企業にお金が回らなくなって、一気に激しい不況に陥る。その処理いかんによっては、不況が長引く、という想定です。日本がすでに経験済みですので、詳しい説明は省きます。
私は、このシナリオの実現可能性はかなり低いと思います。その最大の理由は、オーストラリアが経済社会としてはまだまだ若く、発展途上であり、今後も流入人口を多く必要とすることです。ここは巨大な国土面積を持ち、産業構造でいえばまだまだ先進国とはいい難く、工業製品の多くを海外からの輸入に頼る国です。国土と産業を担う人間がまだまだ足りない、建設途上にある国です。それなりに成熟・高齢化してますから、「伸び盛りの国」とは言えないまでも、でも間違いなく、「今後も移民の流入により着実に人口が増え、まだまだ伸びる国」ではあります。人口や経済が基本的に上昇基調にあるならば、住宅の実需は確実にある。バブルの崩壊、地価の下落はあっても、ある程度下がった時点で、必ず「買い手」が現れて、相場を支えてくれるはずです。
但し、もしシナリオ1(引き続き急上昇)の道をたどったならば、激しいバブルの崩壊により金融システムが揺らぎ、日本が経験しているような長期構造不況の豪州版が現出しないとは限りません。ですがこんなシナリオを望む人は誰もいないわけで、政府としてもその辺はよく心得ていますから、微妙なところで政策金利を操作しながら、不動産価格をうまく誘導しようと、いま一生懸命やってるわけです。
最後に、シドニーの不動産価格が私の予想通り、今のレベルから平均20%下落していったらどうなるのか、もう少し詳しく見ていこうと思います。
先ほど述べた通り、シドニー圏全体で平均20%下落しても、詳しく見ていけば下落率がほとんどゼロのエリアと、大幅に(40%くらい)下落するエリアに二極分化されるように思います。たとえば、日本のバブル崩壊後、東京近郊の住宅地の地価を見ると、都心やターミナル駅、繁華街に近い利便性の高いエリアに比べ、それらから遠くアクセスの悪い(駅からバス便など)住宅地の下落幅の方がずっと大きかったわけです。それと似たようなことが、シドニーでこれから起こると思います。言葉を換えれば、誰もが「自分がどんな不動産を買っているか」に敏感になり、厳しい選別の目が働くわけです。
仮にあるエリアで不動産価格が40%下落したら、そこに家を買った人にとってはもちろん、「えらいこっちゃ」です。たとえばの話、サラリーマン家族が苦労して頭金&諸経費(12〜13万ドル)を貯め、シドニー郊外で50万ドルの家を買って40万ドルの25年ローン(年利6.82%、月々の返済額$2,781)を組んだはいいが、その後5年間でその価値が40%下落し、30万ドルにまで下がったとします。その時点で、彼らの負債はまだ36万ドル以上残っていますから、差し引き6万ドルのマイナス。巨額のローンを抱えたまま、「売り逃げ」もできなくなるのです。
逆に、多くの人にとって魅力のあるエリアや物件であれば、たとえ厳しい選別が働いても、そうは下がらないだろうと思います。例えば、
- 海や川など、水辺空間に近い
- 素晴らしい眺望がある
- 都心部や職場へのアクセスが良い
- 建物に十分特色がある
- 敷地面積が十分ある
- その他、もろもろの環境(自然、治安、教育)が良い
上の条件のうち、4つも5つも当てはまるような物件であれば、そうは下がらないし、場合によっては上がることもあるのでしょう。実際、不動産ウォッチャーの多くが同じことを言っており、彼らが「今後も価格の上昇が望めるエリア」として挙げているのが、都心近くとEastern
suburbs、Lower North Shore、Inner West、ビーチ沿いのサバーブ、お屋敷町Killaraなど、要は「憧れの住宅地」なら今後も有望だと言っています。逆に下落率の激しくなりそうなエリアが、都心から遠いWestern
SuburbsやSouth Western Suburbsだと言う人が多いです。
私はその要注意エリアWestern Suburbsに住んでおり、もし激しく下落すれば由々しき問題なのですが、でもよく観察すれば、Western
Suburbsのなかにもいろんなエリアがあります。私見ですが、いま一番危ないんじゃないかと思うのが、Kellyville、Glenwood、Rouse
Hill、Parkleaなど北西部郊外、或いはLiverpoolの先にあるCasula、Prestonsなど南西部郊外です。いずれもシドニー中心部から約40kmの距離にある、近年住宅開発が急速に進んだ新開地です。
そういうエリアは、都心から遠く離れ、公共交通もほとんどないのに加え、「どこまでも同じような住宅が建ち並ぶ」、没個性的な住宅開発が進んでいます。また、地価高騰が進んだ後で開発されたためか、敷地面積も大きくありません(せいぜい400m2。シドニー郊外の一戸建てにしては小さい)。
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Rouse Hill、Glenwood〜新興住宅地
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上の写真は、つい数年前に開発されたGlenwoodの新興住宅地です。この通り、狭い空間にびっしりと住宅が建てこみ、樹木も空き地も足りない印象です。
ま、新しく開発された所ですから、街路樹がまだ大きく育ってない、っていう面も確かにあるんですけどね。それにしても、密度高すぎ!都心から40kmも離れて、土地がふんだんにあるはずなのに、どうしてこんな余裕のない住宅開発をするのでしょう?
下の写真は、その隣り町、Rouse Hillの住宅街の風景です。ご覧の通り、同じような家が建ち並んで、没個性な印象を受けます。
当世の流行りで、二階建て、ダブルガレージ、内装もシステムキッチンがあったり、ホームシアター向きのリビングがあったりと、「いま風」のデザインが若いファミリーに人気なんですが、でもそういうのは、10年、20年と経てば時代遅れになりますし、将来、このタイプの家が中古住宅市場に大量に出回った時、皆が欲しがる(=高く売れる)かどうか疑問です。
また、同じような家が果てしなく建ち並んでいるエリアというのは、散歩していても退屈です。また、公共交通などないに等しい所ですから、クルマがないとこのエリアから出られません。
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次に、上の新興住宅地を、ごくフツーのシドニー郊外住宅地と比較してみます。下の写真は、我が家の近所、North Parramattaで撮影したものです。このエリアは、シドニー中心部から24〜25kmの距離にあり、1970年台に一戸建ての住宅開発が進み、90年代以降はタウンハウス(土地付きの二階建て集合住宅)の建設が進んだ、典型的な郊外住宅地です。
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North Parramatta〜平均的な郊外住宅地
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上の写真は、少し離れた場所から住宅街を鳥瞰したものです。ご覧の通り、家がびっしり建てこんでいるわけでなく、空間に余裕があります。樹木も勢い良く茂っています。
下の二つの写真は、同じストリートの右側と左側を撮影したものです。右側は木造住宅が建ち並び、左側はレンガ造り住宅が並ぶなど、景観に変化が見られます。また、住宅ひとつひとつの外見が明らかに違い、個性がああります。実際、このような住宅街では、前庭に花や果樹を植えてみたり、駐車場にしてみたり、芝生にしてみたりと、個性を表現しやすいです。
さらにこのエリアは、シドニー郊外では公共交通・買い物の便が良いほうで、徒歩20分でParramattaの鉄道・バスターミナルに、徒歩15分でRiverbankショッピングセンターに到達できます。公共交通を使って、シドニー中心部に通勤・通学する人も多いです。
Parramatta市街地に隣接するため、敷地面積はシドニー郊外としてはさほど広いほうでもありません。一戸建て住宅でいえば、狭くて450m2、広くて800m2、平均600m2、といったところ。それでも、上に紹介した新興住宅地よりは広い印象です。
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上の二つを見比べて、皆さんはどう思われたでしょうか?私がどうしても理解できないのは、上の二つのエリアの平均住宅価格にほとんど差がないことです。
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Rouse
Hill |
North Parramatta |
| 中央値 |
$525,000 |
$547,500 |
| 年間上昇率 |
+17% |
+14% |
| 都心から |
北西43km |
北西25km |
なぜ、シティから非常に遠く、公共交通機関も皆無に等しく、水辺空間も好眺望も、おしゃれな街並みがあるわけでもないRouse Hillあたりの住宅地が、より近くて便利で、住環境も良いNorth
Parramattaと同程度の価格なのでしょう?確かにあの辺は、「シドニー西部の高級住宅地」として知られるCastle Hillに隣接し、「いま風」の新築住宅が並んでいる分、若いファミリーに人気なのでしょうが、今後不動産ブームが終わり、顧客がより厳しい目で住宅を選別するような時代になっても、人気エリアであり続けるかどうかは疑問です。そういえば日本のバブル期、「遠・高・狭」といわれた郊外住宅群が、バブルが弾けると同時に激しく値下がりしたのは記憶に新しいですが、数年後、Rouse
Hillあたりの住宅がそうなってしまうのではないか、という予感がします。
もっとも、より便利な立地であれば安泰だと言っているのではなく、例えばNorth Parramattaの相場も、シドニーの平均世帯年収の7倍以上ですから、すでに高すぎるのかもしれません。今後、水辺に近いとか、建物に特色があるとか、そうした付加価値がないと、値下がりは免れないのかもしれません。
最後に、多くのシドニー住民が憧れる、「ノース」と呼ばれる高級住宅街の風景をみてみましょう。写真は、シドニー中心から8kmの距離にある、日本人移住者にも人気のエリア、Crows
Nestで撮影したものです。この辺の住宅街は常に人気が高く、今後も大幅な値崩れはしないだろうと、不動産ウォッチャーの多くが認めるところです。
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Crows Nest〜高級住宅地
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上の写真は、Crows Nestの繁華街からちょっと入ったところにある閑静な住宅街です。ご覧の通り、道幅が大変広くとってあり、いいクルマが並んでいます。全体に明るい感じで、歩いていて楽しいです。
下の写真が、そこから歩いて数分の距離にあるCrows Nestのレストラン街です。この通り、おしゃれな街並み。手軽にランチやディナーが楽しめ、職場からも近いこのエリアは、若いプロフェッショナル層にも人気があります。
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