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シドニー日記・移住準備編 第2話

ああ国際結婚 (1996年10月〜1997年1月)  

 

 「ミレニアム移住3年計画」がスタートしてから数日後、私は足立区役所の住民課に足を運んだ。目的はただ一つ、結婚(入籍)の届け出に来たのである。もちろん私の場合相手が日本国籍じゃないから即刻OKと言うわけには行かなかったが・・・

 私は友人たちから「国際結婚の手続きって大変なの?」と聞かれる機会が多い。結論から言えば、私たちの場合時間にして2ヶ月強、費用にして1万円強かかり、その他労力としては区役所に2回・東京入国管理局に2回(うち1回は妻を同伴)足を運び、10種類以上の書類を用意しなければならなかった。これを大変と思うかどうかは個人次第だが、私の場合は結婚したおかげで配偶者控除で税金は安くなったし、妻は日本の健康保険と国民年金に追加負担なしで入ることができたし、またオーストラリアの永住権も比較的簡単に取ることができたし、十分モトはとったと思っている。もちろん、結婚手続きの過程はそんなに楽しいものではなかった(当たり前か)。

 オーストラリア人との国際結婚の手続きを一通り概観すると、次のようになる(但し1996年末現在)。

@区役所で外国人登録証明書を発行してもらう(即日発行)

Aオーストラリア大使館で結婚証明書を発行してもらう(同国には戸籍制度が存在しないので、戸籍謄本に相当するものとしてこの証明書が必要となる。費用は100豪ドル(7000円)以上と高く、期間も3週間位かかったと記憶している)。

B入国管理局で「婚姻同居目的の変更・更新許可申請」を行う(これは要するに結婚相手のビザの種別を「日本人の配偶者」にするための手続きで、10種類の書類の提出と、2回の出頭が必要となる。また、許可が下りるまでに1ヶ月以上かかる)。

C入国管理局でビザ更新の許可が下りると、私の戸籍に結婚相手の名前が記載され、めでたく入籍となる

 私の経験した唯一にして最大の難関がB入国管理局での手続きだった。なにしろ、提出すべき書類が10種類と多い上に、そのうちのいくつかは結婚の申請になぜ必要なのか、理解に苦しむものだったからだ。

 必要書類を以下に挙げる。

1. 旅券又は渡航証明書及び外国人登録証明書

2. 申請書、身元保証書

3. 戸籍謄本または婚姻届届出受理証明書(区役所に発行してもらうもの)

4. 外国人登録済証明書

5. 職業関係書類(在職証明書など)

6. 納税関係書類(給与源泉徴収票、確定申告書など)

7. 質問書、親族の概要

8. 二人で写っているスナップ写真

9. 自国の関係機関が発行する婚姻証明書など

10. (留学・修学からの資格変更の場合のみ)在学証明書および出席・成績証明書

 上記のうち、記入するのに一番抵抗があったのは「7.質問書」である。何せ記入内容がほとんど週刊誌のゴシップ記事と同じなのである。例えば、「二人が初めて会った時期、場所、きっかけは何ですか?」とか、「結婚式はする予定ですか?」とか、「親族で婚姻を知っている人は誰と誰ですか?」などということが、お堅い役所の書式に堂々と書かれているのだ。私は一瞬ギャグかと思った。一体なぜ、こんなことまで役所に知らせなければならないんだろう。「噂の真相」や「FOCUS」にでも売りつけるつもりだろうか。そういえば、「8.二人で写っているスナップ写真」を提出させるのはそのためだったのか・・・

 さらに不思議だったのは、質問書には「住居の概要」という欄があって、そこには住所のほか、住居の部屋数や家賃、さらには最寄り駅から自宅までの地図を書かなくてはならないのだ。大体アパマンの不動産広告じゃあるまいし、なぜ「東武伊勢崎線小菅駅下車徒歩3分、アパート2DK、家賃8万円」などということを役所に知らせる筋合いがあるのか。自宅までの地図を書かせるのはもっと理解に苦しむ。恐らくオーバーステイなどの問題が起こった時に入管局の職員が家宅捜索をするためなんだろうが、外国人なら一律に怪しいと決め付ける入管局のスタンスに腹が立ったので、わざと駅から遠回りの分かりにくい道を書いてやった(といっても徒歩3分が4分になるだけだが、実に虚しい・・・)。

 「7.親族の概要」というのも訳が分からない。ここには私や妻の親族(両親と兄弟姉妹、子供)の年齢、職業、住所、電話番号などを記入するのだが、個人対個人の結婚にこんなものがなぜ必要なのだろう。特に妻の親族の場合皆外国にいる上に住所はカタカナ表記だし、電話番号も書かなくていいときてるから、こんなものが屁の役に立つとも思えない。

 ご存知の通り、日本には夫婦別姓を認めないという旧態依然とした制度が残っているため、私の妻の健康保険証の姓は「鈴木」となっているのに、一方住民票にあたる外国人登録証の方は旧姓のまま、国民年金も旧姓(そして日本国内で免許をとればこれもまた旧姓)となる。これは非常に不便である。例えば、オーストラリアで複数の身分証明書を提出する際、一方は旧姓で一方は結婚後の姓だった場合、これらを一体どうやって同一人物だと特定するのだろう。

 最近、英語を日本国の準公用語にするかどうかという議論が盛んになっているが、私は大賛成である。特に役所の公文書は日英語併記にするべきだと思う。もしそうなった場合、いまの日本のお役所がいかに基本的人権とかプライバシーの侵害を公然と行っているか、いかに国際標準からかけ離れた不条理がまかり通っているかが、全世界の人々の前に白日のもとにさらされるからだ。特に欧米のマスコミがそれを知ったら非難の嵐になるだろう(どう考えても、日本に住む欧米人が英訳されたあの質問書に唯々諾々と記入するとは思えない。むしろ怒りで卒倒するかもしれない)。英語の準公用語化は、日本語や日本の社会慣習をもっと開かれた、アカウンタブルなものにしていくため最高のきっかけになるのではないかと私は期待するのである。

 お役所批判で思わずヒートアップしてしまったが、結局結婚申請は2ヶ月で認められ、1997年1月6日、私たちは無事入籍することができた。「ここまで苦労したんだから、きちんとモトはとるべえ」と、私はすぐさま健康保険と国民年金の申請に走った(もちろん追加負担なし)。その年の確定申告書には妻の職業を「主婦」と書いて配偶者控除も受けられたし、2年後にはオーストラリア結婚永住ビザも比較的容易に取得できたので、結果としては十分すぎる位モトはとれた。日本って、夫がサラリーマンで妻が専業主婦にきちんとおさまっていれば、税金は安いし、暮らしやすくていい国ですよね。

 私の場合、非常に理解のある親に恵まれたことも幸いだった。今回の結婚にしても、役所から結婚の通知が来た日に実家に電話を一本入れ、「俺、いま結婚したから、よろしく」と伝えただけですべてOKだった(就職した時もそんな感じだった。ちょっとくだけすぎかも・・・)。私にとって、「大人になった我が子の人生は自分たちの私物ではない」と考えてくれる両親ほど有難いものはない。こういう親だからこそ、子供は自由にのびのびできるし、いつまでも良い関係が保てるのだと思う。

p.s)拙著「国際結婚の手続き」もご参照ください。

 

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