一度訪れると移住をあこがれる国・オーストラリア、二度訪れると、あこがれから切実感へ・・・でも現実には自らあきらめてしまう人がほとんど、でもちょっと待って下さい!オーストラリアで安定した職に就き、永く住みつづけられる、現実的な方法があるのです。
語学留学やワーホリメーカーとしてこの国にやってくる日本人は後を絶ちません。しかし、ワーホリの方は一年間で帰国、語学留学の方は卒業したら帰国というケースがほとんどです。また折角永住ビザを取って移住しても、仕事の不安定、子育ての問題、家族の反対等の理由で不本意な帰国を余儀なくされる人も少なくありません。移住先オーストラリアで生活を確立して永く住み続けるにはどうしたら良いのか?そのための一つの現実的な方法はプロフェッショナルになること、つまり職業的専門能力をつけることです。
私がオーストラリアへの移住を決意したのは今から4年半前の1996年10月のことです。それから東京でIT(情報技術)関連の会社に転職し、約3年間働いて実務経験を積み、2000年5月末にシドニーへの移住を果たしました。その後約2ヶ月間の就職活動を経て、8月から現地の企業でIT技術者として働いています。そこで、私自身の体験などを参考に、移住を成功させるための大事なポイントを分かりやすく整理して発表したいと思い、今回の企画を思いつきました。
企画の題名は「オーストラリアIT移住マニュアル」、その名の通り現役のIT技術者もしくはこれからIT技術者を目指す移住希望者を主な対象としておりますが、それ以外の移住希望者にとっても十分役に立つ内容にするべく、また移住を考えていない方にとっても読み物として十分楽しめるように配慮しました。
あなたはオーストラリアに移住した後、どんなライフスタイルを目指しますか?その答えは各人各様だろうと思います。でも想像するに、移住希望者の多くは、6ヶ月とか1年とかいう短期ではなく、より長期間生活することを希望されていると思います。また多くの人は、働かずに遊び暮らそうというのではなく、ちゃんとした仕事を持って自活することを希望されていると思います。
オーストラリアで仕事を持ちながら長期間生活するとなると、当然ながらその間にいろいろなことが起きます。就職・転職、引越し、マイホーム購入・売却、結婚・離婚、子供の学校選び、日本への里帰り、家族の呼び寄せ、老後資金の積み立てetc・・・日本から移住する時はもちろん、オーストラリア国内で生活していても周りの環境は随時変化します。こうした暮らしのさまざまな局面を想定しながら、長期的にどんなライフスタイルを追求していくのか、これが移住生活の大事なポイントだと思います。
そのためには、移住先・オーストラリアの社会環境や生活水準、そして労働市場の状況についてある程度理解しておく必要があると思います。私がこれまで暮らしてみた実感では、オーストラリア社会は貧富の差がかなり(恐らく一般に考えられているよりも)大きく、例えばシドニーでは海の見えるプール付き大邸宅が建ち並ぶ富裕なエリアからドラッグと犯罪にまみれる低所得エリアまであり、仮に富を幸せの基準とすればまるで天国と地獄が隣り合わせになっている印象があります。そして、高等教育を受け専門的職業に就いている人とそうでない人との収入や暮らし向き、就職の難易度にも想像以上の格差があるようです。また、国民の生活を保障する福祉国家の時代もすでに終わりを告げたようです(詳しくはこちら)。移民というものはどの国でもそうですが、異国で理想のライフスタイルを勝ち取るには基本的には自分の才覚や努力を頼りにする以外にないと思います。
これから先は私の主観だけで話しますが、日本で育った人がオーストラリアに移住する場合、この国の何かにとことん惚れこんでいるならともかく、そうでない限り少なくともこの国の中流以上の暮らしでないと満足できないと思います。オーストラリアには第三世界の貧困や戦火から逃れて移民してきた人がゴマンといますが、比較的豊かな国で育った私たちの場合、求める生活水準が彼らとは大分違うはずです。
それでは、オーストラリアの中流の暮らしって一体どんなものでしょうか?一言で言えば、一応マイホームとマイカーを持ち、1〜2年に一度の日本への里帰り費用をなんとか捻出でき、貯蓄をある程度できるような暮らしのことです。具体的には、日本の大部分の都市サラリーマンの暮らしをイメージしていただければ、当たらずとも遠からずというところでしょうか(さらに言えば、日本と比べてマイホームの敷地面積はもう少し広いかも知れませんし、休暇はもう少し多いかも知れません。逆に外食や海外旅行の回数や電化製品の数は少なくなるかも知れません)。
この程度の暮らしをするためにどれ位の世帯収入(税込)が最低限必要でしょうか?オーストラリアは都市によって物価水準がかなり違うし、子供の数によっても違うので一概には言えませんが、シドニーでは8万ドル(520万円)、ブリスベンやパースあたりだと6万ドル(390万円)程度が目安になると思います。もちろん、オーストラリア人の半分以上はこれ以下の収入レベルで暮らしているわけですが、日本への里帰りを念頭に置くならば、このレベルがギリギリの線ではないでしょうか。
このレベルの収入をオーストラリアで手にするにはどうすれば良いか。すでに10年以上働かずに暮らせるだけの貯蓄のある人とか、特別な才覚のある人は別として、そうでない人の場合(私自身も含めて)、一番手っ取り早い方法は専門的職業能力を身につけて、移住後スペシャリストとして就職することだと、私は断言いたします。オーストラリアの場合、高所得職種はスペシャリストやマネージャーに集中していて、それ以外の職種との収入や社会的地位の格差は大変なものがあります(詳しくはこちら)。業種、職種、経験年数にもよりますが、スペシャリストとして就職する限りこの国で中流以上の生活レベルを手に入れることは比較的容易です。管理的な能力と経験のある人はマネージャーでも良いでしょう、もちろんそれにはオーストラリア人の部下を使いこなすだけの語学力や職務能力が前提となります。
その他、日本人の場合は現地で営業する日系企業に現地採用社員として勤めるという方法もあり、移住者の多くはこの方法で生活の糧を得ています。実際のところ、英語圏以外でオーストラリアにこれだけビジネス展開している国は日本だけですし、それなりの雇用を生み出しているわけですから、これは第三世界の移民から見れば日本人の特権と映ることでしょう。また職種にもよりますが中流以上の収入を得ることも可能でしょう。とは言え、日系企業の雇用は労働市場全体から見れば限られていますし、求められる能力も一般のスペシャリスト職と異なる場合が多く、いざとなった時「つぶしがきかなくなる」可能性もあり、それには十分注意したいところです。
移住後スペシャリストとしての就職を目指す場合、一般的にはオーストラリア人だけで十分間に合っている業種や職種を避けた方が賢明だろうと思います。例えば、アカウンタント(会計・経理職)の場合、一般的な経理職ならオーストラリア人と伍して就職を勝ち取るのは難しいと言われており、就職するには特別な領域のスキルが必要になってくると思います。また、オーストラリアであまり盛んでない産業の場合、就職のチャンスがどうしても限られてしまうようです。例えば機械工学等のエンジニアの場合、強力な製造業を持つ日本と違ってオーストラリアでは就職はかなり難しいと聞きます。私の友人の中には、工学の修士号をとってもエンジニアとして就職できず、より就職しやすいITに転身した人が何人もいます。
実際、日本人移住者が就職しやすいスペシャリスト業種としては、ITをはじめ、金融、証券、保険などが有望と聞きます。これらはいずれもオーストラリアにおける成長産業で、今後大量の雇用が生みだされるといわれています。特にIT業界は今後長期間にわたる人手不足が予想されており、移住後の就職のしやすさに関しては間違いなく上位に入るでしょう。
永住ビザの取得に関してもIT職は非常に有利です。オーストラリア永住を目指す日本人の多くは、Skilled Independent Visa(独立技術移住ビザ)を取ることになると思います。このビザはポイント(得点)制になっていて、120点満点で110点という高いポイントを取らないと合格できません(注.合格点は随時変動します)。ポイント計算の基準になる項目は職業、年齢、英語力、実務経験などですが、このうち配点の一番高い項目が職業で、満点は60点で全ポイントの半分を占めます。つまり、合格の鍵を握るのは職業なのですが、IT技術職は条件を満たせば60点満点が取れるのです(注1)。なお、60点を取るための最低条件は申請時から遡った18ヶ月間のうち12ヶ月の実務経験があることです(注2)。この辺の規定は移民局の方針によって随時変わりますので、最新の情報は下記サイト等で入手すると良いでしょう。
(注1)その他、60点が取れる職業としては、調理師、通訳・翻訳者、教師、看護婦、マネジャー、エンジニアなどがあります。
(注2)IT職で永住ビザを申請する場合、技術査定機関(ACS:AUSTRALIAN COMPUTER SOCIETY)のスキルアセスメントも必要になりますが、そこでは実務経験が4年以上あることが望ましいと書かれています。
これで概論編は終わり、次回以降は各論編に入ります。次回は、IT就職を目指す人がどのように事前の準備活動を進めるべきかについて実践的に解説いたします。
(付録)永住ビザの取得に関する情報サイト
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