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就職活動日豪クイック比較<(2000/8/13)


 「都の西北、Cumberlandの森」にある我が職場。シドニーの中心より約30キロ離れた、森の緑がまぶしいオフィスは、私にとって3つ目の会社になります。ふと振り返れば、大学を卒業して6年間ですでに二回転職し、東京→福岡→群馬→千葉と転勤を重ねてついに地球の南の果てまで来てしまいました。社会学修士なのに今なぜかITの仕事をしていますし、その前は環境ビジネスのベンチャー企業にいましたし、本当に人生って分からないものです。少なくとも、大学を卒業した時点では今の自分の姿は全く想像できませんでした。もっとも、これから6年後の自分がどうなっているかも、全く見当がつきません。

 もっとも、今どき6年間で2回転職するとか、海外で働くというのは珍しくも何ともないわけですが、我ながら面白い経験だったなあと思うのは、日本とオーストラリアという二つの国で就職(=転職)活動をしたことです。私が1996〜97年にかけて東京で行った就職活動と、今年シドニーで行ったそれは、@IT業界への就職を目指した、Aエージェント(人材紹介会社)を通した、B中途入社として採用された等共通点が多く、自分の体験をもとに就職活動の日豪比較を行ってみると面白いと思ったのが、今回の企画の趣旨です。

※オーストラリア就職のノウハウについては、キャリア志向オーストラリア就職ガイドをご覧ください。
※日本での就職活動の苦労話については、就職活動前編・年齢と経験の壁を、オーストラリアでの苦労話については、トホホ就職活動記をご覧ください。


1.データファイル

 私が日豪で行った転職活動をデータにまとめて比較してみました。

東京(1996〜97年) シドニー(2000年)
内定までに要した日数 95日 58日
面接した回数 12回 11回
うち内定数 2社 1社
コンタクトした人材紹介会社数 3社 23社
訪問した人材紹介会社数 3社 11社
面接した人材コンサルタント数(うち女性) 4名(2名) 15名(6名)
面接官数(うち女性) 18名(2名) 17名(9名)
面接平均時間 45分 80分
実現した年収/希望年収 102% 120%

 上の表から読み取れるように、どちらも結構苦労したんですよ。2〜3ヶ月間も駆けずり回って、面接とかその準備に莫大な時間と労力を使って、結局内定がもらえたのは1〜2社だけですからね。それだけ自分に実力がないのかもしれませんが、まあ人生こんなものでしょうね。結果としては希望通りの職場に入社し、給料も希望額もらえたわけですから、素直に感謝しなければバチが当たるでしょうね。


2.就職活動日豪比較

 日本とオーストラリアの就職活動は、どこが似ていて、どこが違うのでしょうか。自分の体験に即して考えてみました。

 なお、この比較は大学新卒ではなく、中途採用を念頭に置いたものであることをご了承ください。また、東京とシドニーでの就職活動には約3年のタイムラグがあることも忘れてはなりません。したがって、約3年間で激変してしまうような性質の事項(例.インターネット利用の度合い)に関しては極力比較を避け、長期間にわたって変わりそうもない事項(例.履歴書の書き方)について比較するよう留意しました。

第一段階−履歴書作成

 日本でもオーストラリアでも、就職活動はまず履歴書とその詳細版(職務経歴書)を用意することから始まります。採用してもらうために、履歴書にはかっこいいことを書き立てるのも、日豪ともに同じです。

 ただし、履歴書に書く内容は多少違います。日本の履歴書は「年齢・性別→学歴・職歴→資格→志望動機」の順に書かれるのが一般的ですが、オーストラリアでは通常その逆に「志望動機→資格→学歴・職歴→年齢・性別」の順に書かれ、年齢・性別は書かなくとも良いことになっています。私の経験から言えば、オーストラリアでは日本と比べて、年齢や性別などプライベートなことが採用の基準になることは少ない(というかそれをやってしまったら法律違反だからめったにない)ようです。

 また、オーストラリアは日本と違って、履歴書にReferee(推薦人)を明記するのが一般的です。Refereeとは会社側が求職者の能力や適性をより客観的に評価したいと思った時にコンタクトする人のことで、通常は前の職場の上司がRefereeとなります。オーストラリアでプロフェッショナルな職場に就職する場合、Refereeは最低二人は必要とされているようです。

 ※日豪の履歴書の違いについては、日本の履歴書・欧米の履歴書もご覧ください。
第二段階−エージェントにコンタクト

 履歴書を書き終えたら、次のステップはエージェント(人材紹介会社)とコンタクトをとることです。もちろんエージェントを通さずに自分で新聞広告などで探しても良いわけですが、求職者からすればエージェントをいくら使ってもタダだから、(IT産業に関して言えば)日豪ともエージェントを使う人が多いようです。

 日豪とも、ちゃんとしたエージェントなら先方の会社との連絡、履歴書の送付、面接のセッティングの他、履歴書の書き方のアドバイス、面接のアドバイス、スキルアセスメント(職務能力の客観評価)などをやってくれます。スキルアセスメントに関しては、オーストラリアのエージェントの方が細かいレベルまできちんとやってくれたような気がしますが、これは私がこれまでこの国で働いたことがないから当然なのでしょう。そして日豪ともに、単なる「履歴書の運び屋」のようなことしかやらない、質の低いエージェントにも時々出会います。

 ただし、日本よりオーストラリアの方がより多くのエージェントとコンタクトするのが一般的のようです。実際、私がシドニーでの今回の就職活動でコンタクトしたエージェント数、面接したコンサルタント数は、三年前の東京での就職活動の約4〜8倍です(上表参照)。

 これには日豪エージェントの転職に関する考え方の違いが反映していると思います。日本では、エージェントが一人の求職者の転職をとことんまで面倒を見ようとする、つまり専任になりたがる傾向が強く、逆にオーストラリアのエージェントは、そのような観念が比較的希薄なのだと思います。だから日本のエージェントは、「これでもかこれでもか」という位たくさんの面接をセッティングしてくれる反面、求職者が他のエージェントと掛け持ちで仕事探しをすることを嫌う傾向が強い。一方、オーストラリアでは、「この会社のこのポジションは俺たちの会社の案件だけど、あのポジションは別の会社の領域」といった棲み分けが結構進んでいて、一人の求職者がたくさんのエージェントを掛け持ちしてもオッケーということが多いのだと思います。

 ではどちらが良いのか?フルタイムの仕事を持つ求職者にとっては、コンタクトすべきエージェントが少なくてすむ分、日本のシステムの方がラクかも知れませんね(実力のあるエージェントにめぐり合えればの話)。ちなみに私は今回の就職活動で、広いシドニーを東へ西へ、計11社のエージェントに足を運び、20代前半から50代まで、大勢のコンサルタントと話ができて、楽しかったです。エージェントといっても、シドニー・ハーバーを見下ろす超豪華なオフィスだったり、自宅を改装したSOHOだったりといろいろでした。

 
第三段階−面接準備

 エージェントとの話が済んだら、次の段階はいよいよ面接です。といっても、会社が自分の履歴書を見て興味を持ってくれないことには面接は始まらないわけですから、エージェントから「面接がセッティングできました」という連絡があった時はとてもうれしい。これは日豪とも全く同様です。

 そして、「面接必勝法」のようなアンチョコ本が広く出回っているのも日豪ともに同じです。とはいえ、オーストラリアは英語国なので、この手の本の多くは英米で出版されたもので、特にアメリカ人の書いた本などは「如何に面接で他人を出し抜くか」みたいなアグレッシブな内容にあふれていて、より控えめなこの国の国民性に合うのだろうかと疑問に思ってしまいます。実際私は、市販のアメリカン本よりも、エージェントで発行している「面接の心得」みたいなブックレットの方を参考にしました。

 オーストラリアの面接でよく聞かれる内容は、日本とそれほど大差ないように思います。結局会社としては、「この人が職務を遂行する能力があるのか」、「チームのメンバーとうまくやっていけるのか」といったことを知りたいわけですから、自然と面接の内容は「これまでの職務経験を詳しく話してください」ということが中心になるわけです。その他、会社のビジネスに関する知識とか、前の仕事をやめた理由、この仕事を希望した動機などが聞かれるのも、日豪とも同じです。

 ただし、オーストラリアは英語文化圏なので、英米圏で流行っている面接手法がよく採り入れられます。例えば近年流行っているのは「行動アプローチ」、つまり自分が問題に直面した時にどのように解決するのかということを問う手法です。例えば私がよく聞かれたのは、「これまであなたが仕事で直面した一番難しい状況を詳しく話してください。そのときあなたはこの問題をどのように処理したのか教えてください」という質問です。私は仕事柄、このような話しのネタはいくらでも持っていますが、でもこの種の質問は事前に準備していないと、いざと言うときに答えられない性質のものですから、面接前に時間をかけて、「模範回答」のようなようなものを準備していくことになります。特に最初の頃は、英語にあまり自信が持てなかったので、面接に行く道すがら、模範回答をモゴモゴ口走りながら歩いたり、電車に乗ったりしていました(変質者だと思われたかもしれない)。これも、移民生活の風物詩でしょうね。
第四段階−面接

 さていよいよ面接です。面接の前にはピリピリとした心地よい緊張感が走るのも、面接官が現れたら明るくハキハキと振舞うことが良いとされるのも、日豪ともに全く同じです。

 私の経験からすると、面接時間はオーストラリアの方がずっと長いです。これは、日本では必ずといって良いほど二回以上面接をやるのに対し、オーストラリアでは一回で済ましてしまうことが多いからかもしれません(それでも、二回面接する会社の方が多分多いでしょう)。私がシドニーで行った計11回の面接の平均時間が1時間20分、一番長いもので2時間10分!英語が母国語でない私にとって、長い長い面接は正直言ってシビアでした。面接から解放された後、身体がグッタリしているのに頭だけがギンギンに冴えた状態になることも多かったです。

 シドニーの面接官は、東京と比べて女性の割合が多いようです。私の面接官となった17名のうち、女性は9名と半分を超えていました。オーストラリアではIT産業における女性の割合が日本よりもかなり高いようです。私の経験では、女性の面接官の方が物腰柔らかく、気軽に話せる人が多いのに対し、男性の面接官の方がよりシビアな技術的な質問をバシバシしてくる人が多かったです(無論、個人差はあります)。

 オーストラリアの面接は日本と比べて、面接官と求職者が対等な立場に立ち、より双方向のコミュニケーションという側面が強調されることが多いようです。実際には面接官が採用の選択権を持っている以上、対等な関係ではないわけですが、だからこそできるだけ対等にするべきだということが暗黙の了解になっているのでしょう。実際、求職者が面接官に対していろいろ質問したり、意見を言ったりすることが奨励されていようです。

 オーストラリアでは、面接官が求職者に年齢・性別などプライベートなことを聞くべきではないとされていますが、面接官によっては聞く人もいます(特にアジア系の面接官に多いようです)。私の場合、年齢を正直に答えると同僚の大多数よりは年寄りになってしまうわけですが、面白いことに、オーストラリアでは多少年を食っていることがプラスに評価されることが多いようです。若い連中より人格的に成熟していると見られるからでしょう。恐らく日本では、そうでないことの方が多いと思います。

 面接が終わると、結果待ちということになります。このプロセスに関しては、日本の方がきちんと期日通りに回答してくれることが多いのに対し、オーストラリアではかなりのんびりしていて、結構気を揉みます。私はもう就職が決まって働き始めているわけですが、未だもって何の回答もしてくれていない会社が数社あります(多分不採用なんでしょうが、今さら確認する気はもちろんありません)。
第五段階−内定

 自分の携帯電話に、"I HAVE A GOOD NEWS!"という高潮したエージェントの声が届くと、いよいよ内定です。長く、苦しかった就職活動が終わり、新たな職場、新たな生活に胸を高鳴らせる至福のひとときが始まります(この新鮮な感覚は、会社に入ってしばらくすると、消えてしまうものです。人間ってわがままですよね)。

 オーストラリアで内定GET!ということになれば、会社からOffer Letterという手紙が届きます。ここには、労働条件(給料、休暇、福利厚生)や人事部コンタクト先が明記されており、文末にサイン欄があります。ここにサインをして会社に送り返せばすべて完了となります。このあたりの手続きは、サインとハンコの違いを除けば、日豪に基本的な差はないと思います。
   

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